Fraunhofer IGBとIITローパル校などの連携がもたらす界面工学の新展開
Posted on 11 Feb 2025 21:00 in インド科学技術 by Yoko Deshmukh
なんてことない話題なんだけど、個人的にとても関心があります。
ドイツに拠点を置くFraunhofer Institute for Interfacial Engineering and Biotechnology IGB(以下、Fraunhofer IGB)は先ごろ、インド工科大学(IIT)ローパー校およびビルラ工科大学(BITS)ピラーニー校と覚書(MoU)を締結し、水資源をはじめとする資源の持続可能性や循環型経済に関する共同研究を進める方針を打ち出した。
German Institute Fraunhofer signs MOUs with IIT Ropar and BITS Pilani on sustainability and circular economy
界面工学とは、固体・液体・気体など異なる相の境界面(界面)の性質や反応を制御・改善する学問領域である。
たとえば、水処理では高度な膜分離技術が不可欠となるが、膜表面の構造や親水性・疎水性などの「界面特性」を最適化することで、汚染物の除去効率や膜の耐久性を飛躍的に高めることができる。
Fraunhofer IGBは、この界面工学分野で培った専門知識をさまざまな産業分野に応用しており、特にバイオテクノロジーとの融合による革新的な技術開発で定評がある。
MoUがもたらす可能性としては、高度膜技術の共同開発を通じた水資源を中心としたイノベーションがある。
Fraunhofer IGBが有する膜材料や薄膜コーティング技術、表面改質技術などをIITローパル校やBITSピラーニー校の研究開発力と組み合わせることで、地域の水質改善や浄水技術の向上を図る。
特に、工場排水や農業廃水の再利用など、クリーンで効率的な水循環を実現する手段として期待される。
界面制御による汚染防止・除去技術も期待できる。
水処理システムでは、微生物や有機物などが膜表面に付着し、膜を劣化させるファウリング(目詰まり)の問題が大きい。
界面工学的アプローチでは、膜表面にファウリングを抑制するコーティングを施したり、抗菌・抗藻の表面機能を付与したりといった技術の開発が進められる。
界面工学をベースにした環境センサーおよびモニタリング技術も注目される分野のひとつ。
流路内部や膜表面の化学・物理的変化を即時モニタリングできる高感度センサを構築することで、AI/MLを活用したリアルタイム制御が可能となり、水処理システム全体の効率化を促進する。
MoUでは企業との連携による技術移転やライセンス契約の促進も視野に入れている。
界面工学から得られる新技術を大規模に実装し、インド国内のみならず国際的に展開することで、持続可能な水資源管理やクリーンテック市場の拡大に寄与する可能性がある。
Fraunhofer IGBは応用研究における世界的リーダーであり、産業用途に直結した研究開発の実績が豊富である。
一方、IITローパル校やBITSピラーニー校は先端技術研究を牽引するインド屈指の教育・研究機関であることから、両国が協力することで、以下のようなシナジーが期待される。
まず、インドの現場ニーズに合わせた実装力として、分離・浄化技術など、環境インフラを改善する実用レベルのソリューション開発が推進される。
理論と応用を橋渡しする研究ネットワークとしては、大学・研究所・産業界が連携するクラスターを形成し、基礎研究から実証、実装へと円滑に進める体制を確立する。
国際的な人材育成・交流として、研修プログラムの共同設計や学生・研究者の相互派遣により、界面工学やバイオテクノロジー分野の専門人材を育成するとともに、国際的な研究コミュニティの拡大につなげることもできる。
今後の見通しとして、今回のMoUの大きな目的は、水やエネルギー、食料といった資源における最善事例を「共有・実装」しながら、次なる技術的課題の抽出と解決策の開発を加速させることにある。
特に界面工学は、水処理分野における効率化や耐久性向上など直接的なインパクトをもたらす重要分野だ。
さらに、AI/MLやIoTなどのサイバーフィジカルシステム技術との融合が進めば、水処理工程の高度自動化やリアルタイム最適制御が実現し、持続可能で気候変動にも強靱な水インフラを構築する可能性が高まる。
Fraunhofer IGBとIITローパル校、BITSピラーニー校との連携は、インドとドイツの技術的専門知識を組み合わせることで、界面工学をはじめとする先端技術の研究・開発を加速し、実社会への応用を促進、水資源をめぐる地球規模の課題解決に向けて、両国が生み出すイノベーションに大きな期待が寄せられている。
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Yoko Deshmukh
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インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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