「トランプ2.0」がインドに及ぼす影響とは:The Hindu

 

Posted on 07 Nov 2024 21:00 in インドの政治 by Yoko Deshmukh

The image is from "The Hindu."



「The Hindu」が、衝撃の「トランプ2.0」誕生決定より一夜明けた本日、インドへの影響について論じる記事をアップしていたので、要点を抄訳したい。

What Trump 2.0 means for India and South Asia 

二国間関係に目を向けた時、「トランプ1.0」はインドでは賛否両論があったが、「トランプ2.0」についてはモーディー政権にとって、貿易関係の構築、インド企業への技術開放、インド軍への米軍装備品の供給拡大など、過去(「トランプ1.0」時代)の交渉内容を基盤にしていくものと有望視されている。

またトランプ氏は、(「1.0」時代に議論を深めたもののバイデン政権がその継続に関心を示さなかった)自由貿易協定交渉(FTA)を再開すると見られる。
インドに二酸化炭素排出量の削減を迫ることもなく、むしろ(1.0時代の)2019年に提携されたルイジアナ州ドリフトウッド(Driftwood)のLNGプラントに関する覚書を掘り起こし、米国の石油やLNGを購入するよう促す可能性が高い。
この覚書は、Petronet Indiaから米に25億ドルの投資をもたらすはずだった。

モーディー政権がバイデン政権やUSCIRF(U.S. Commission on International Religious Freedom)から解決を迫られている、民主主義の規範、少数派の権利、報道の自由、人権といった問題が棚上げされるかもしれない。
「外国(寄付)規制法(Foreign (Contribution) Regulation Act, 2010)」が対象とする気候系および人権系NGOの扱いに関する質問についても懸念する必要はなくなるだろう。

インド政府はまた、昨年スィーク教徒の国家『カーリスターン(Khalistani)』樹立を目指す過激派活動家で、カナダに亡命中のグルパトワント・パンヌン(Gurpatwant Pannun)暗殺未遂事件に影で関わっているとの嫌疑で係争中の「パンヌン・ニジャール(Pannun-Nijjar)事件」に関し、米国務省と司法省による公式の批判が下火になることも期待する。
共和党ヒンドゥー連合(Republican Hindu Coalition)の創設者Shalabh ‘Shaili’ Kumarは、トランプ氏はむしろカーリスターン独立派のグループを「取り締まる」だろうと述べた。
これに関してはカナダのジャスティン・トルドー首相もインド政府を公式に批判しているが、トランプ氏は同首相との関係が冷え切っていることで知られる。

では、問題が生じるとすれば、それはどこからだろうか。
まず、トランプ氏は貿易関税の削減に固執している。
トランプ氏は対抗関税措置を次々に実施し、世界貿易機関(WTO)にケチをつけ、最終的にインドの輸出業者に対するGSP Statusを撤回した。

2つ目は、各国首脳との私的な会話内容を暴露するばかりか、時にはそれを誇張したり、拡大解釈したりする癖がある。
これは特に、他国が絡むとさらに深刻なものとなった。
2019年、トランプ氏はパキスタンの当時の首相イムラン・カーン(Imran Khan)氏に対し、「カシミール問題は解決できる」と述べ、モーディー首相からその件で仲介を依頼されたと語った(インド政府はこの主張を強く否定)。
2020年、中国が実効支配線を越え、インドとの軍事的衝突に至った時、トランプ氏は、モーディー首相は事態の進展について「機嫌を損ねている」と(当時Twitterに)投稿したが、インド政府は両首脳がこの件で会話した事実はないと否定した。

トランプ氏はまた、米国とイランが緊張関係にあった2018年6月、当時の国連特使ニッキー・ヘイリー(Nikki Haley)氏をインドに派遣し、事実上の制裁をちらつかせてインドを脅迫した。
その結果、インドはイランとベネズエラからの石油輸入を停止した。

トランプ氏がプーチン大統領との交渉に関心を表明していることを考えると、インドがロシア政府との関係を維持していることに対する圧力はほとんど受けないと見られる。
インドはまた、行き詰まっているインド、中東、およびヨーロッパを結ぶ経済回廊計画を復活させるため、ガザとレバノンにおけるイスラエルの軍事攻撃を終結させ、湾岸諸国との協議を再開するようトランプ氏の介入を求めるだろう。

むしろインドの近隣諸国は、トランプ氏勝利の影響を懸念している。
トランプ氏は前回の任期中、パキスタンに対する米国の援助のほとんどを中止、シャバズ・シャリフ(Shahbaz Sharif)政権は、国際通貨基金(IMF)や世界銀行からの融資に対する米国の支援も失うことを不安視しているかもしれない。
バングラデシュでは、民主党幹部との親交のあるムハマド・ユヌス(Muhammad Yunus)首席顧問がすで​​にトランプ氏と衝突している。
トランプ氏は先週、ソーシャルメディアに「バングラデシュ政府は少数派としてのヒンドゥー教徒を保護していない」と投稿した。

バイデン政権はネパール、ブータン、モルディブなど南アジア諸国への支援を拡大しており、この地域では新政権がこれまでほどの関心を持たないかもしれないと憂慮しているかもしれない。

本日最も読まれている記事
1. 日本人と顔立ちがよく似た「セブン・シスターズ」北東部の女性、人種差別に立ち上がる Posted on 18 Mar 2017
2. 購入後半年で故障したフォッシルのスマートウォッチを巡る、意外な顛末 Posted on 16 Sep 2019
3. インドで人気の日本アニメは、このタイトル Posted on 15 Jun 2023
4. インディラ・ガーンディー国際空港ターミナル3の様子、機内食、その他あれこれ:写真編 Posted on 13 Oct 2018

5. インド中華に迷いそうになったら、ハッカヌードル食べ比べはいかが Posted on 26 Oct 2017


本日の練習






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



Share it with


User Comments