家計に占める平均食料支出の割合低下が示しうる問題

 

Posted on 06 Mar 2024 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

食糧安全保障もおぼつかない中にあって、バイオ燃料用の農作物栽培の議論が活発なんだよね。



インドの経済格差の拡大と、食糧の安全保障というテーマで執筆された記事を見つけたので、自分のためにも抄訳したい。

India’s widening economic disparity, food security

統計・プログラム実施省(Ministry of Statistics and Programme Implementation、MoSPI)による最新版となる2022年度の家計消費支出調査(Household Consumption Expenditure Survey、HCES)ファクトシートでは、インド国内の経済格差の拡大と、慢性的な食料安全保障の課題に関する重大な懸念を提起している。

この報告書では、国民1人当たり月間支出(Monthly Per Capita Expenditure、MPCE)に関して人口の上位5パーセントと下位5パーセントの間に全国的な格差があることを明らかにしている。
中でも最も顕著な格差は農村部で観察されており、MPCEが推定全国最低生活賃金を下回る下位5パーセントは、日々の基本的需要を満たすのにも苦労している。
これは地域間での資源と機会の配分が不平等であることを浮き彫りにするものであり、この格差に寄与する根本的な要因をより深く調査する必要がある。

考えられる要因のひとつに、農村部では高収入の働き口がなかったり、質の高い教育や訓練が受けられなかったりするため、雇用や収入の機会が非常に限られていることが挙げられる。
そこへ男女の不平等や社会的差別の存在が、貧困の悪循環を生み出し、基本的なニーズすら満たせない苦境が固定化する。

報告書ではさらに、農村部と都市部の両方で1999年度以来、食料支出の割合が一貫して減少していることを示している。
特に農村部の世帯あたり平均消費金額に占める食費の割合は、1999年度の53.2パーセントから2020年度は44.4パーセントに減少した。
都市部でも、食費の割合が同42.4パーセントから33.6パーセントに減少している。
この一貫した食料支出の割合の減少は、深い分析が急がれる。

この状態を放置すると、当然インド全土の弱い立場にある人々に悲惨な結果をもたらす恐れがある。
うち最も重大な懸念としては、食料不安の増大および限られた収入と資源の制約により、必須の食料品を確保できないと、栄養失調やそれに伴う合併症など、身体的および精神的な健康に悪影響を与えることだ。
また質の高い医療や教育を受けられないことで、経済的不利益による既存の不平等をさらに悪化させ、貧困の連鎖を永続させてしまう。

不安定な状態は、賃金の停滞と相まって、たとえ家計における食費の割合が一見低くても、食料不安の増大につながり得ることを示唆している。
このため、農村部の弱い立場にある人々を支援することを目的とした、農村部のインフラやサービスへの投資、質の高い教育や訓練を誰もが受けられる環境の整備、必要な支援を提供するための社会的セーフティネットの導入など、的を絞った介入が重要である。
さらに、持続可能で公平な食料システムを促進することは、すべての人が手頃な価格で栄養価の高い食料を入手できるようにするためにも不可欠である。

HCESの最新データから見えてくることは多いが、インドの経済格差と食料安全保障に関する複雑な全体像の一部に過ぎず、実際の課題を包括的に理解し、効果的な解決策を見出すためには、さまざまな出典からのデータをより深く分析し、統合する努力が欠かせない。

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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