インド企業における女性リーダーシップの活用度、日本と状況は酷似
Posted on 23 Jan 2016 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh
ふだんは土中から外界の様子をうかがうモグラのような生活をしておりますが、ときどき出てきて、このような素晴らしいセミナーに参加させていただいています。
*Ms. Poonam Barua in the session, the photo sourced from EPWS India
わが街プネでは昨年9月、主に働く外国人女性を対象とした、人脈構築やセミナーの機会を提供することで、公私ともに充実した生活設計を応援する非営利組織、「Expatriate Professional Women's Society(上海版英語サイト、インドサイトは現在準備中)※」、略称「EPWS」が発足した。
もとは1993年に中国の上海で産声を上げた団体のようだが、その上海メンバーのひとりで、現在はプネに在住されているポルトガル人のエルガ・エスペランサ(Helga Esperanca)さんが主体となり立ち上げた。
今まで、プネには外国人駐在員や、帯同の配偶者などが集まる場所はけっこうあっても、ガチにインド人やインド社会にまみれて仕事やビジネスをしているような人、ましてや外国人女性のための交流の場というのは皆無だった。
わたしのように、業務上つい自宅に引き籠りがちになってしまう者にとっては、このような社交場は特にありがたく、できる限り顔を出すようにして、英気を養っている。
昨日は、このEPWSが主催し、講師として女性リーダーシップ推進フォーラム「Forum for Women in Leadership」の設立者であり、会長を務めるプーナム・バルア(Poonam Barua)氏を招いたセミナー「Women Vision: Embrace Balanced Leadership」に参加した。
実は最初、氏ご本人と知らずに自己紹介していた時に、職業はフリーランス翻訳者だと言ったら、いきなり「じゃあ、私の書いた本を日本語に翻訳できるかしら?」と訊かれたので、つい反射的に「けっこう忙しいので、いつ着手できるか分かりませんが」みたいな生意気な返答をしてしまったら、「できるの、できないの?イエスかノーで答えなさい」と凄まれ、その凡人外れした迫力に思わず、「わ、わたくしめでよろしければ、ぜひ」と答えたのだった。
しかし、そのご著作のタイトル「Leadership by Proxy: The Story of Women in Corporate India」からして非常に興味深く、まずは内容を読ませていただき、機会があれば本気で翻訳させていただけないだろうか、という気持ちが湧き起こっている。
氏は企業における女性のリーダーシップ採用を推進すべく、インドを中心に全世界で講演したり、また誰もが名前を知っているような「フォーチュン500(Fortune 500)」クラスも含めた大企業で、幹部職への女性採用に向けたアドバイスをしたりといった活躍をされている。
セミナーの内容は、2時間のうち1時間はレクチャー、残りの1時間は参加者とのディスカッションという形で、氏の熱いエネルギーがちりちりと、着用されているサリーの末端まで感じられた。
インドも日本と似ていて、女性に対しては、家庭や地域、世間が期待する昔ながらの役割というものがあり、プロフェッショナルとしての人生を存分に追求することをためらわせている。
したがって都市部においては女性の社会進出こそ当たり前になっているものの、リーダーという大きな役割はなかなか回ってこない。
それは「女性もステレオタイプを甘んじて受け入れているからだ。やりたいことをやろうという勇気と覚悟がない点も問題だ」と氏は指摘していた。
焦点が「インドの企業社会におけるバランスの取れた女性リーダーの育成と推進」にあったので、当然この国の企業体質と、女性たちのメンタル面での障壁について、国籍も様々な男女から、活発な議論が交わされた。
わたしは話を聞きながら、インドの抱えるもっと深くて大きな根源的問題、すなわち農村部の女性たちの活用についても、思いを馳せていた。
氏が講義の冒頭に述べていたように、全世界の人口の半数近くは女性であるにも関わらず、その活用率は極端に乏しいことが、統計によっても明らかになっている。
いわば、女性は未発掘の資源なのだ。
そんな折、昨年12月に福岡で参加した、著名カメライターでブロガーの「かさこさん」によるセルフ・ブランディング術セミナーで出会った、ともさん、こと日下友亜(くさかともえ)さんが、タイムリーな記事を発表していたので、ここに紹介させていただきたい。
広島大学の大学院生が、インドの農村女性と協力して、現地で入手できる素材や、日本の伝統素材を使用して、すてきな服を作ったばかりかファッションショーまでやり遂げ、しかも自身のブランドを立ち上げてインドと日本とを繋ごうしている、という話だ。
詳細は、上記リンク先の記事に大変読みやすくまとめてあるので、ぜひ読んでいただき、日本にも、ここまで行動力がある若者がいるのかと、良い意味でショックを受けていただけたらと思う。
わたしのような万年引き籠りが、ああだ、こうだ、と頭でだけ考えている間に、実際に行動を起こしている有望なリーダー候補が、わが日本にもいることに、改めて尊敬と感謝の気持ちでいっぱいである。
同時に、氏の講義中の言葉を借りれば、「自分に何ができるか、ではなく、相手に何ができるのか」という視点から、自らの行動を設計することも時には必要だと痛感した。
※現在、インド版のURLは準備中だが、関心のあるプネおよびその周辺で仕事をしている女性は、ぜひ「EPWS Facebookページ」を購読してみてはいかがだろうか。
今回は、あえて男性も招いての講義となった。
活発な議論が飛び交っていたが、脳ミソの処理スピードが遅いわたしには、
「なぜ、その質問に、この回答?」と、飲み込むのに精一杯。
その合間にかろうじて、「インド女性がインド社会でリーダーになることを阻む要因とは何か」
という、ちょっと考えれば分かりそうなことを質問できただけだった。
それでも、氏は丁寧に時間を割いて回答してくださった。
*The photo sourced from EPWS India
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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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