電気もない教師もいない:でもインターネットさえあれば大丈夫

 

Posted on 11 Dec 2015 06:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

いざ、未来へ。農村やスラムの下克上は近いかもしれません。



*The photo from The Better India, where the article is inspired.

貧しく、学校へ行くことがままならない境遇に身を置く子供たちにとって、勉学とはそうした生活から脱出するための蜘蛛の糸である。

そのような子供たちは、よほど自立した人格を備えていると思う。
なぜなら勉学する機会を与えられた途端に猛勉強し、過酷な家庭や住宅状況を、自学自習できないことの言い訳には決してしないからだ。
インドの中学校と高校の修了時にそれぞれ実施される州別統一試験で、貧困家庭出身の学生の方がむしろ高成績でトップを飾ることが多いのは、不思議なことではない。

ただし教育そのものを受けられない子供たちは、まだまだ厳然と存在する。
今月2日の「The Better India」では、インドにおける教育格差を打開すべく、教師の不足やインターネットの通信網の不在はおろか、電力の供給さえままならない「取り残されたコミュニティ」である都市部のスラム地区や農村に住む子供たちに、技術の力を借りて教育を施している企業の話が掲載されていた。

「Zaya Learning Lab」という社会企業では2013年の設立以来、工夫に工夫を重ねた技術力を活用し、すでにインド全土50箇所以上、2万人もの子供たちを対象とした遠隔教育を運営している。

同社設立者のニール・ディソウザ(Neil D'souza)さんが、モンゴルで実施した孤児院支援などでの実体験から発案したこの仕組み。
オンライン上に質の高い教育用コンテンツを用意し、それをインフラの整備状況もバラバラな遠隔地の教室からアクセスできるようにするというものだ。

具体的には、双方向型、いわゆるインタラクティブ性のある子供の興味関心を喚起するデジタル教材を制作、ログイン情報を入力すれば教師も生徒もアクセスできるクラウド上の場所に保管し、さらに一度に60名までアクセス可能な、無線LANルーターのような形状のイントラネット・クラウドを構築、生徒たちは「Amazon Kiindle」のように書籍やデジタル教材があらかじめ読み込まれているためオフラインでも使用でき、しかもフル充電で10時間は稼働可能な教育専用タブレット「Zaya Micro Cloud」を利用して学ぶ。

この教育クラウド「ClassCloud」の導入費用は各学校5000ルピー、そしてサービスやタブレットの利用料金は、生徒あたり月50ルピーと格安だ。
まさに世界中のどこにも負けていない、デジタル・ネイティブ向けの最先端の教育プラットフォームと言える。

ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相の要請を受け、フェースブック(Facebook)社マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)CEOも、同社の社会活動的取り組みの一環として安価なインターネットを全人類に届けることを目指す「Internet.org」の活動を、インドでも推進している。

わたしの運命も、インターネットによって大きく変わった。
これからのインドにインターネットこそが数多くの奇跡を起こすと信じて疑わない。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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