ダウンロードするか否か、「アプリごとき」に究極の選択を迫られるわたしたち

 

Posted on 05 May 2020 21:00 in インドの政治 by Yoko Deshmukh

コロナ禍をきっかけに変わったことのひとつは、便利だからと無自覚にサービスを享受する態度に疑問を呈し、じっくり考える機会が与えられたことも挙げられると思います。



明日から順次、50万人にもおよぶ可能性があるとされる、海外から帰国できなくなっているインド人たちの帰国が許可されるという話題を目にした。

From May 7 Onwards, India to Bring Back 'Distressed' Nationals Stranded Abroad

その中で、インドに上陸した者は「全員」、14日間の自己隔離(ホテル等を利用する場合は有料)とその後の検査に加えて、政府が感染者やその疑いのある人の行動を把握して感染経路を割り出すために展開しているアプリ「Aarogya Setu」のインストールを義務付ける、とあった。
これは今後、全土封鎖が解除され、インドへの渡航が解禁されてから、インドに入国する外国人を含む人々にも適用される可能性があるな、と思っていたところで、次の話題を見つけた。

Aarogya Setu order triggers an unhealthy data row

前述の「Aarogya Setu」アプリを全国民に義務付けたい政府が、インストールしない人に対し、刑事罰の適用を含む厳格な措置を検討していることに関して、サイバー犯罪専門家らなどを含むデジタル権利活動家やテクノロジー系弁護士のグループが、「同意と妥当範囲、目的の制限を重視する、2017年の最高裁判決および情報技術法 [Information Technology Act] に違反する、重大なプライバシー侵害になり得る」と主張している、というものだ。

実際、インド企業各社でも、ロックダウン解除後の操業開始に向け、従業員に「Aarogya Setu」のインストールを出社の条件として義務付ける動きが見られる。

政府筋は、「ウイルスに感染していることが確認された人の行動を把握するための、必要な医療的介入の管理以外の目的には用いない。リスクのないユーザーのデータは45日間で、リスクのあるユーザーのデータも60日間で削除される」としている。
同筋は「仕事を再開したい者はアプリのインストールを義務付け」との命令は災害対策法(Disaster Management Act)に照らしたものであり、アプリのコードをまもなくオープンソース化する、とも発表している。

一方、世界中に普及するスマートフォンOSの99%のシェアを占めているアップルとグーグルはともに、感染者の行動把握を目的として位置情報を追跡するアプリのストアへの掲載を禁止する、と発表している。

Apple, Google Ban Location Tracking In Coronavirus Contact Tracing Apps

現在、両社は共同で、コロナウイルス感染拡大防止を目的とした接触追跡システムを開発しているが、その真意は各国政府による国民のプライバシーデータの収集や乱用を防止することにあるとし、GPSではなくBluetoothから発信される信号を利用して接触状況を把握する。

今回の禁止により、各国政府や保健機関等が展開している、GPSを利用したユーザーの位置情報を把握するアプリが使用できなくなり、両社が開発するアプリの仕組みに頼らざるを得なくなる。
ただしBluetoothのみを用いた接触追跡は、ユーザーのスマートフォンでBluetoothがオフになっていたりすると無効になってしまうことから課題もある。

コロナ禍は、わたしたちのプライバシーが、保健衛生の名の下でいとも簡単に侵害され得る状況も浮き彫りにしている。
 

なお、現状に何ら役立つ情報をご提供できていない「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」なので、せめて「在ムンバイ日本国総領事館」より日々発信されている州内の状況や州政府による措置に関する最新情報を、今後はこちらにも転載させていただきたい。

=== 以下、同掲題メールの転載 ===
※5月2日付けのメール、件名「インドにおける新型コロナウイルスに関する注意喚起(ロックダウン措置の延長ほか)」

●インド政府によると,5月2日現在のインド国内感染者の合計は37,336例(死亡1,218例)となっています。
●5月1日,インド政府は,現行のロックダウン措置を4日以降,2週間延長する旨発表しました。新たなロックダウンのガイドラインでは,レッド・ゾーン,オレンジ・ゾーン,グリーン・ゾーンで規制内容,許可される活動が異なりますが,引き続き,国内線・国際線・鉄道による旅客の移動,メトロ,個人による州間移動,映画館・ショッピングモール等は,ゾーンに関係なく,特別な場合を除きインド国内全土で禁止・封鎖等が継続されます。また,中央政府によるガイドラインに加え,各州政府独自の規制が追加される可能性があります。
●インディラ・ガンディー国際空港(デリー)は,5月17日までのすべての国際線・国内線の運休を発表しました。詳細は各航空会社にお問い合わせください。日本航空及び全日空は,5月末までのデリー便の運休を既に発表しています。なお,5月4日に予定されている日本航空臨時便は,予定通り運行する予定です。

在留邦人及び短期渡航者の皆様へ

本2日,在インド大使館が管轄内の在留邦人あてに以下の領事メールを発出したので,お知らせします。

1 インド政府によると,5月2日現在のインド国内感染者の合計は,37,336例(死亡1,218例)となっています。州ごとの内訳等は以下をご覧ください。
https://www.mohfw.gov.in/node/4904/

2 5月1日,インド政府は,現行のロックダウン措置を4日以降,2週間延長する旨発表しました。新たなロックダウンのガイドラインでは,レッド・ゾーン,オレンジ・ゾーン,グリーン・ゾーンで規制内容,許可される活動が異なりますが,引き続き,国内線・国際線・鉄道による旅客の移動,メトロ,個人による州間移動,映画館・ショッピングモール等は,ゾーンに関係なく,特別な場合を除きインド国内全土で禁止・封鎖等が継続されます。また,中央政府によるガイドラインに加え,各州政府独自の規制が追加される可能性があります。
新たなガイドラインの下での制限措置,ゾーン毎に許可される活動及び各地域におけるゾーン一覧等については,下記インド内務省の発表等をご参照ください。
(インド内務省発表: 4日以降の新たなガイドライン)
https://www.mha.gov.in/sites/default/files/MHA%20Order%20Dt.%201.5.2020%20to%20extend%20Lockdown%20period%20for%202%20weeks%20w.e.f.%204.5.2020%20with%20new%20guidelines.pdf
(報道参考: 各地域のゾーン一覧)
https://www.ndtv.com/india-news/coronavirus-full-list-of-red-orange-green-districts-in-india-2221473

3 インディラ・ガンディー国際空港(デリー)は,5月17日までのすべての国際線・国内線の運休を発表しました。詳細は各航空会社にお問い合わせください。日本航空及び全日空は,5月末までのデリー便の運休を既に発表しています。なお,5月4日に予定されている日本航空臨時便は,予定通り運行する予定です。

4 ロックダウンの再延長を受けたインド滞在中の外国人の査証の取り扱いについて,新たな発表がされる場合は,領事メールにて改めてお知らせいたします。これまでのインド政府による発表では,5月3日までの間に失効するインド滞在中の外国人の査証の5月3日までの延長手続きが無料化されています(注:従来は4月30日までが対象期間とされていたもの)。延長を希望する場合は,管轄する外国人登録事務所(FRRO/FRO)にオンラインで申請する必要があるとのことです。
 また,査証を5月3日まで延長した外国人が,5月3日から5月17日の間に出国する場合は,罰則の対象とならないとのことです。
外国人登録事務所(FRRO/FRO)の申請先URLは下記になります。
https://indianfrro.gov.in/eservices/home.jsp
(インド政府広報局ウェブサイト関連部分)
https://pib.gov.in/newsite/PrintRelease.aspx?relid=202346

5 各州政府は感染ホットスポット周辺を封じ込めゾーン(containment zone)及びバッファーゾーン(buffer zone)に指定し,完全封鎖措置(家・敷地から外出することを禁止)をとっています。今後もホットスポットは増える可能性があるところ,邦人の皆様におかれては,州政府発表や報道等でご確認の上,行動にご注意下さい。
封鎖措置の対象となる地域においては,市民は外出せず,生活必需品についても店頭ではなくデリバリーで調達することが求められています。

6 在留邦人,インドご滞在中の皆様におかれては,以下の点にご注意の上,最新情報の入手に努めてください。今般の新型コロナウイルス拡大に伴うインド政府のロックダウン措置により邦人の皆様の中で困っていることや悩んでいることがあれば,本メール末尾の当館問い合わせ先にご連絡ください。
(1)中央政府及び地方政府が感染予防のための措置を引き続き強化しており,制度が突然変更される可能性もありますので,十分注意して行動してください。
(2)在インド日本国大使館では在留邦人の皆様からの保健相談を受け付けるための窓口を設置しています。
jpemb-hokensoudan@nd.mofa.go.jp
ご利用に際しての詳細は,以前の領事メールをご覧ください。
(3)ご自身や周囲の人の感染予防のため以下の点にご注意下さい。
・アルコール系手指消毒薬または石鹸と流水による手洗いを頻繁に行う。目,鼻,口などに触れる前に手洗いをする。
・咳やくしゃみがあるときはマスクを着用して鼻と口を覆う。マスクがない場合は,咳やくしゃみのときに口と鼻をティッシュなどで覆い,手洗いを行う。

(各種情報が入手できるサイト)
インド政府広報局ホームページ
https://pib.gov.in/indexd.aspx
インド保健・家庭福祉省公式ツイッター
https://twitter.com/MoHFW_INDIA
インド入国管理局ホームページ
https://boi.gov.in/
在日インド大使館ホームページ
https://www.indembassy-tokyo.gov.in/jp/index_jp.html
外務省海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/
厚生労働省ホームページ:新型コロナウイルス感染症について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
首相官邸ホームページ:新型コロナウイルス感染症に備えて
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/coronavirus.html

このメールは,在留届にて届けられたメールアドレス及び旅レジに登録されたメールアドレスに自動的に配信されております。

【問い合わせ先】
在ムンバイ日本国総領事館・領事班
電話(91-22)2351-7101
メール ryoji@by.mofa.go.jp

=== 転載終わり ===


今週の「Lockdown Gig」はこちら☆

 

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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