クアラルンプールからマラッカへ日帰り旅:ポルトガルの影響を残す独特の味、クリスタン料理

 

Posted on 18 Sep 2018 21:00 in トラベルASKSiddhi by Yoko Deshmukh

歴史の遺産を色濃く残しつつ、観光地化され過ぎた感の否めないマラッカで、そこだけ贅沢に時が止まったような、異次元なひと時を堪能しました。



クアラルンプールから日帰りで訪問できる景勝地や歴史的な観光地は数あるが、中でも世界遺産の都マラッカは、高速バスでわずか2時間の距離にあり、最も足を運びやすいだろう。
我々がクアラルンプールに滞在していた16日と17日は、たまたまマレーシア連邦結成記念日という珍しいタイミングだったことから、17日の休日にはマレーシア発祥の地とも言えるマラッカに足を運ぼうと決めた。

そう決めてから「地球の歩き方マレーシア・ブルネイ編」最新版(2018~2019年版)の「マラッカ」ページをめくっていたら、こんな店を見つけた。



メルバ・アット・ザ・マンション
 

マレーシアの料理は、中華料理やタイ料理、インドネシア料理など様々な国や文化の味を融合したものが特徴とされているが、中でも1511年にマラッカを制圧したポルトガルの影響を今も残しているマレーシア料理は珍しいと思う。

ポルトガル風マレーシア料理、という記述を見て、わたしが真っ先に思い浮かべたのは、もちろんマラッカよりも長期にわたってポルトガルの支配下にあったゴアで親しまれている、ビンダルー(Vindaloo)バルチャオ(Balchao)などのポルトガル風ゴア料理だ。

これは何としてでも食べたい。
前日からとてもワクワクしてマラッカ行きのバスに飛び乗った。

マラカ・セントラル・バスターミナルに到着したのが、ちょうど昼時だったということもあり、グラブ(Grab)で迷わず直行したのは、「メルバ・アット・ザ・マンション」の入居する、由緒ある高級ホテル、「ザ・マジェスティック・マラッカ」。
 


植民地時代のマラッカを彷彿とさせる、堂々たる威容の「Majestic Hotel」。
 


 

なお、あらかじめ断っておくが、実際の料理については、わたしのへたくそな食レポよりも、しっかりした取材に基づき練られたクレア(CREA)の詳細な記事を参照していただきたい。

マラッカのマングローブの木の実カレーはまるでトリュフのような味だった! - Crea

素敵なインテリアは、まさにマラッカのお金持ちの邸宅(=マンション)に案内されたようで、気分は高揚する。
開店とほぼ同時刻だったためか、わたしたちの他にお客さんがいなかったこともあり、贅沢な空間を独占させてもらった。

この店では、素直に前述ガイドブックの「おすすめ」に従い、骨付き鶏肉とゴロゴロ野菜が魅力的なカリー・デヴァル(Curry Deval)を注文しようと決めていた。
冒頭の写真が、カリー・デヴァルである。
給仕さんによると、このカレーはかなり辛いということで、スチームライスとの組み合わせが推奨された。

実際には辛すぎて食べられないということはなく、久しぶりに上質なスパイスを身体いっぱいに吸収したような、爽快な刺激だった。
少しの酸味が心地よいが、これはビンダルーやバルチャオにも通ずるものがある。
次回訪れた時には、CREAが紹介していたマングローブの木の実カレー、「カリー・ケルア(Curry Keluak)」をぜひ食べたい。

スターターとしては、「fermented krill」という記述に惹かれてチナロク・フレトゥ(?→ Cinalok Fretu)というフリッターを注文。
これは、アンチョビのような、発酵させた小魚のエキスなんだそうだ。



「Cinalok Fretu」。熱々のクリスピー。
 

そしてデザートは、迷わず「Sagu kung Sukri Malaka」。
これは、甘さ控えめのサゴ(タピオカ)のババロアにココナツクリームと椰子糖(パームシュガー)をあしらった絶品。
ココナツクリームの下に茶色い椰子糖シロップが沈んでいる。



絶品中の絶品、「Sagu kung Sukri Malaka」は、ぜひ食べて欲しい。
 

これだけ素敵な空間で、これだけ素晴らしい料理を堪能しても、会計は95リンギット。

初めての訪問で、なぜこんなに勝手知っているのか、と思われる方もいるかもしれない。
なんと食事中、店主のメルバさんがわざわざ出てきてくださって、いろいろと教えてくださるという、サプライズなおもてなしがあったのだった。



ご自身で執筆された料理本を手に、詳細に説明してくださるメルバさん。
 

ちなみにメルバさんの話す英語にはマレー訛りは微塵もなく、わたしからするとインドのパールスィー教徒や金持ちの上流階級が話すアクセントと完璧に一致していてた。
語尾に「-lah」が付くなど、とんでもない。
まるで同じ国の人が話しているような耳慣れた英語だったため、会話に何の支障もなく極めてスムーズだったこともあり、ついつい話が弾んだ。
メルバさんは、もちろんゴアに根付くポルトガル風料理についてもよくご存知だった。



メルバさんの料理本
美しい女性はメルバさんの母、愛らしい女の子はメルバさんご本人という。
食事中も置いておいてくださり、ゆっくり中身を読みながら美食をいただくことができた。
 

メルバさんはこのホテル内で料理教室も開催されていて、わたしたちが食事していた間も、料理教室を受講した観光客とおぼしき西洋人ご夫婦が別のテーブルで食事していた。
少し手の空いたメルバさんに、「地球の歩き方」で紹介されている箇所を見てもらったら、とても驚き、喜んでくださった。

他では決してできない体験ができる、「メルバ・アット・ザ・マンション」での食事だけを目的にマラッカを訪問する価値は十分ある。



クラッシーな雰囲気の店内。
リラックスして食事を楽しめた。
 


レストラン入口。
 


ニョニャご先祖様の写真かな。
 


ご著書の1ページより。
黒もち米のプリンも、いつか絶対に食べに来たい。


※猛烈な後悔として、メルバさんのご著書をご本人サイン付きで現地で買わなかったこと。書籍自体は後日、クアラルンプールのツインタワー膝元のスーリアKLCC内4階の紀伊國屋書店で入手した(113リンギット)。サインをもらうという目的のためにも、カリーケルアを食べるためにも、必ず再訪するつもりだ。





                



About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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