国内観光客の激増によるレー・ラダックの危機
Posted on 21 Jul 2018 21:00 in トラベル・インド by Yoko Deshmukh
インド人観光客には、楽しい旅行は結構だけど、世界の縮図と思って自らの行動を律することも学んでほしいです。
*Photo source: Scroll.in
インドでは2009年に公開され、その後日本でも大人気となった、アーミール・カーン(Aamir Khan)主演の「3 Idiots(きっと、うまくいく)」。
わたしは一度しか観たことがないのだが、作中で重要なシーンの舞台となって以来、ジャンムー・カシミール州のレー(Leh)に国内からの観光客が押し寄せている。
当然、現地の住民に収入をもたらす経済効果という恩恵はあるが、予想された通りの問題も多発している。
「Conde Nast Traveller India」電子版が伝えている。
How to save Leh - Conde Nast Traveller India
パンゴン湖(Pangong Lake)のほとりには、今でもシンボリックな「おしり」形のスツールや、ヒロインのカリーナ・カープール(Kareena Kapoor Khan)が乗っていたものと同じ型のスクーターが設置され、多くの観光客が訪れて記念写真を撮影していく。
それまで、平地部に住むインド人の中には、異なる文化的背景を持つレーやラダックが同じインド国内に存在することを知らない人すらいた。
あるデータによれば1978年に観光目的での訪問が解禁されたレーを訪れた観光客527人のうち、インド人はわずか27人に過ぎなかったという。
時は流れて2016年にこの地を訪れた観光客のうち、国内旅行者は19万7,000人、外国人旅行者は3万8,000人となって完全に逆転、また観光客全体数も年40%もの増加率で推移している。
レーのクショク・バクラ・リンポチェ(Kushok Bakula Rimpochee)空港は1日9~10便のフライトが運航、さらに冬季には積雪のため閉鎖される難関としても知られるゾジラ(Zojila)とレーを結ぶ道路に代わる近道として、ナレンドラ・モーディ政権下でトンネル工事が行われており、予定では2022年までに完成する。
トンネルが開通すれば、現在3.5時間かかっている道のりが15分にまで短縮される見込みだ。
当然レーは過密化し、また標高の高い地域ゆえ、かつては澄み切っていたはずの大気は急速に深刻な汚染に晒されている。
特にハイシーズンである6月から9月にかけて20万人あまりの訪問者があるため、ゴミも山積みとなり、レーは文字通り四苦八苦の状態だ。
こうした流れを受けて、ラダックでは2013年より域内でのペットボトル飲料水の使用や販売を禁止している。
さらに問題となっているのはトイレ。
ラダックでは古くから、水をほとんど必要としない乾燥処理を行っていたが、観光客の急増に伴い、水洗トイレの設置が急ピッチで進んでいる。
しかし浄化槽ではなく浸漬抗(soak pit)のため、地下水への影響が心配されている。
現在、レー近郊の村では、持続可能な観光運営を試すパイロットプロジェクトを展開するなどしており、観光客の増加による経済効果と、環境への影響をどうバランスしていくかが大きな課題となるだろう。
わたしはこの機会にぜひ、インド人旅行者がどこへ行っても自分たちのゴミは自分で持ち帰るなり、マナーを守った観光をするように徹底的に心掛けるようになって欲しい。
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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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