新たな下水処理施設よりマングローブ林の保護を!ムンバイカーの決意

 

Posted on 14 May 2018 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

大規模な処理施設を新設するのではなく、下水処理単位をなるべく小さくして各自浄化するという道は、沿岸の巨大都市の宿命とも言えるような気がします。



*Mangrove belt in Mumbai, source: NASA Earth Observatory
 

今年3月、マハーラーシュトラ州森林局がムンバイー自治体(Brihanmumbai Municipal Corporation:BMC)に対し、北西部マラド(Malad)から北東部郊外のタネ(Thane)に広がる広大なマングローブ林を移植し、マラド下水処理場建設のための用地確保を許可したという話題が、環境に関心を持つ市民の間に衝撃として走った。

年々、モンスーン季が到来する度に深刻化するムンバイーの洪水被害。
その一因は、老朽化した下水システムにより水はけが悪いことと、急増する人口に対応できていない下水処理施設の不備が挙げられている。
しかし、それにも増して見逃せない原因は、もともとムンバイー沿岸部の広い地域に鬱蒼と繁っていたマングローブ林が、都市開発によりむやみに伐採され、激減しているためであることは、多くの市民にとって本能的に常識となっている。
「The Better India」が詳しく伝えた。

Mumbaikars Choose Mangroves Over Sewage Plant, Join Hands To Save Them! - The Better India

記事では、マングローブ林をはじめとする環境への配慮を呼び掛ける自然保護団体「保護行動基金(Conservation Action Trust:CAT)」を主宰するデビ・ゴエンカ(Debi Goenka)の次のような指摘を紹介している。
「下水処理はムンバイー危急の需要のひとつであることは疑いない。一方、現存する下水処理施設は、それぞれ処理能力の50%も発揮していないことがほとんどであるという現状を鑑みると、マングローブ林を移植するというのは妥当な解決策とは言えない」

世界大百科事典による「マングローブ林」の定義は、次の通り。
「紅樹林ともいう。熱帯の川口付近で潮の干満の影響を受けるところに生じる特殊な植生で,日本でも琉球諸島の各地に発達しているほか,鹿児島県喜入(きいれ)に北限地がある。(中略)潮の影響を受ける泥地に生えるので耐塩性が強く,(中略)マングローブ林の樹木が用材,木材原料,チップ原料などに直接利用されるほか,マングローブ林は水産資源の重要な生産場所となっていることから,熱帯地方の諸国ではこの特殊な植生の保護に関心が払われている。」

ここに記されている通り、西ベンガル州とバングラデシュの一部を潤すガンジス川河口デルタ地帯に広がるスンダルバンズ(Sundarbans)に世界最大規模の、またタミル・ナードゥ州ピチャワラム(Pichavaram)にも超巨大なマングローブ林を有するインドでは、世界的に急速に消えゆくマングローブ林の保護に懸命に取り組む人々が多く存在するようだ。

ゴアを拠点とするインド・マングローブ協会(Mangrove Society of India)に在籍する専門家の指摘によれば、マングローブの移植は、その複雑な植生からほぼ不可能に近く、専門家との緻密な協議なく闇雲に実施することは、結果として永遠に破壊する行為に繋がり得ると、BMCに警鐘を鳴らす。

冒頭のCATではこのため、住宅ブロック毎の下水処理機構の整備を提案、他の環境保護団体や市民も、マングローブ林を失うことが取り返しのつかない大災害を招くことになりかねない、という意見で一致している。





          



About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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