真夏の暑さが増すマハーラーシュトラ州アコラより

 

Posted on 19 Mar 2018 21:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh

まだ気持ちの整理がついていません。



シッダールタ妹の夫Rさんが昨晩、急逝した。

寝る前に横になってテレビを見ている時に、突然の心臓発作が襲い、意識を失ったまま眠るように亡くなったそうだ。
まだ47歳だった。
ふだん、心疾患の兆候はまったくなかった。

最愛の夫を突如、失った妻Sさんのショックはかなり大きく、取り乱している。
わたしが彼女の立場でも、同じ状態に陥っただろう。

昨晩、突然の報せを聞いた午後11時過ぎに慌てて身支度をして、プネーから600キロあまりの道のりを車で飛ばして、今朝7時ごろアコラに到着した。
運転手のプラヴィンさんは急な依頼でも快く引き受けてくれたので、シッダールタと、プネーに住む彼らの長女との8時間あまりの車中は終始無言だった。
父の今際の際に立ち会えなかった長女の無念さが、同じくわが父が息を引き取った時にインドにいたわたしには痛いほどよくわかる。

Rさんは、わたしがインドに嫁いできて、周囲に相談できる親戚も友人もいない時に、よき話し相手になってくれた「インドの兄」とも呼ぶべき人だ。
チキンカレーが得意で、大学講師の勤務の傍ら、料理も含めて家の仕事も率先してやる人だった。

2年前に娘が初めての海外旅行で日本を訪問し、その時の体験を事細かくRさんに話してからは、「いつか自分も日本へ」と言うようになり、パスポートも取得していた。

Rさんのいないアコラの家は、依然として実感がなく、どこからともなく「バイー(シッダールタのこと、兄弟)、○○へ行こう!」という声が聞こえてくるようだ。
実際、自宅にいた次女によれば、ヒンドゥー新年のグディ・パドワであり日曜日でもあった昨日は夕方、妻のSさんと6月に予定している結婚25周年記念旅行に備えた買い物へ2人で出掛けて、「とても幸せそうだった」という。

Sさんの自宅には、近隣の友人知人、そしてわたしたちのような親戚たちが詰めかけている。

先ほど、病院から全身を布で包まれたご遺体が帰宅した。
眠っているように穏やかな表情で横たわるRさんの首に花輪をかけ、みんなが最後のお別れを告げると、竹で組んだ担架に乗せられて、それを親族がトラックまで担ぎ、火葬場へと永遠の旅に出た。
火葬のアグニ(火付け)は通常、女性は立ち会えず、長男または親族の男性がすることになっているのだが、今回は特別に長女と次女が執り行い、立派にその務めを果たしたそうだ。
あんなに小さかった2人が、まさかこんなに早く父親を見送ることになるなんて。

急に父を失った2人の姪っこたちはまだ学生だ。
妻Sさんは専業主婦なので、これからはシッダールタとわたしが、主に金銭面や教育面で父親代わりを果たしていかねばならない。
いつまでも悲しみに沈んではいられない。

それにしても長女や次女の友人たちが代わる代わるやってきて、呆然として動けなくなってしまったSさんに代わり、親戚に交じって家のことを手伝ったり、泣いてばかりいないで前を向いて進んでいこうと、懸命に2人のことを励ましたりしているのは頼もしい。
父親を亡くした直後のパニック状態にある家庭に、物怖じせず出入りできるのは、紛れもなく本物の友達だ。
よき友人を数多く持っている2人の将来は有望だ。

長女がプネーで通う大学は、現在試験の真っ最中。
Rさんは長女に、独立して生きていける強い女性になって欲しいと願っていた。
「だから試験は諦めない」と言う長女の決意に従い、わたしたちは明後日にはプネーに帰る。

気丈な長女。
泣きたい時には思い切り泣いてもいいと思う。

ところで今回、Rさんの死因が急性心筋梗塞だったということで、お参りに来た主に年配の近隣住民から、心無い言葉が少なからず投げつけられている。

夫を急に亡くしたばかりで悲しみのどん底に叩き落され、ましてや責任まで感じて自分を責めている人に対して、「心臓発作は、こういう処置を施しておけば助かったかもしれないのに」などと言うことに、どれほどの意味があるのか。
頭の空っぽな人間はどこの国にもおり、特にインドの地方都市にはそれを親切だと信じて疑わない老害がうじゃうじゃいることを目撃し、憤りを感じている。

ただし今回のことで、急性心臓疾患の恐怖を目の当たりにした。
残されたわたしたちは、このような事態に今後、万一にも遭遇した時のために、もしかしたら命を助けることができるかもしれない救急措置をしっかりと憶えておくことで、お悔やみにしたいと思う。

[55] 心臓発作からあなたの大切な人を救うために - 国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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