インドで初めての歯科治療体験は、想像通りシステマチックでドラマチック

 

Posted on 22 Feb 2017 23:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh

初めてのプネーでの歯科診察体験は、近年、横浜と福岡で歯科の診察を受けたわたしにとって、日本よりもずっとデジタル化が進んでいることの発見でもありました。



わたしは歯医者については、ちょっとうんちくを語れてしまえるぐらい、ひと通りの治療を体験している。
未体験なのは、インプラントと入れ歯ぐらいか。

とっさの時、歯科医の検索も口コミチェックも、予約までもネット1本でできる時代 Posted on 21 Feb 2017

さて、プネーで初めてかかることになった歯科医、「ナンダ(Nanda)さん(Nanda Dental Care Premier)」に行ってきた。

ナンダ歯科医院はコレガオン・パークのノース・メイン・ロード(North Main Road)と、例の橋がぶつかる交差点の付近にある「The Westin Pune」を通り越してもう少し先に進み、大型ショッピングモールの「Koregaon Park Plaza」の真裏といった位置にある。
大通りから細い路地に入り、150メートル進んだところに白亜の建物が見えてくる。

小さいが車が乗りつけられるアプローチのついた、一見ホテルのようなエントランスを入ると、つ~んと消毒薬の匂いが漂ってくる。
歯科恐怖症歴の長いわたしは、早くもドキドキしてきた。

受付では、女性がタブレット型端末を差し出し、簡単な問診票に記入、氏名や年齢のほか、メールアドレスや電話番号も入力を求められた。
予約時間までまだ10分ほどあったが、すぐに診察室に通された。
もちろん清潔で日本とほとんど変わらない設備だった。

さきほど、受付のところにいた女性は歯科衛生士さんでもあったようで、テキパキと診察台に道具類を並べると、さっそくわたしの口の中を検分。
「あっ、ここね、ほんとだ、割れてるわね~。先生はもう少ししたら来るから、診てもらいましょう」

ほどなく、まだ40代前半くらいとおぼしき先生が、溶接作業員のような透明プラスチック製の顔面カバーを装備して颯爽と現れた。
「おぉ、見事に割れているね。じゃ、外していきましょう」と有無を言わさぬ感じで力を込めて破片を取り除き始めた。
治療対象の歯が、根管治療を済ませて神経が外れたもので、痛みを感じなくなっていることを承知しているためか、けっこう豪快だ。
破片があらかた取れたら、ドリルでギュイーンとてきぱき、表面の形を整えていく。
この作業も、日本の歯科医から「ちょっとでも痛かったら左手を上げてくださ~い」と優しく声をかけられることに慣れているわたしには、少しビクビクしたが、当然のことながら、まったく痛みはなかった。

形が整ったら、先生は次の患者さんのところへ颯爽と去って行ったので、歯科衛生士さんが歯型に柔らかいガム状のペーストをセットした器具を口内に装填、型を取ってくれた。
これまた豪快で、型を取ってもらった後に手鏡で顔を見たら、口の周りにべっとりと乾いたペーストの残りかすがついていて、衛生士さんが笑って、「顔、拭いたほうがいいわ」とペーパーナプキンを渡してくれた。
ただ、固まったペーストを歯から外した後、思ったほどしっかりと型がついていなかったようで、同じペーストを再び歯に押し当てて型を取りなおす、という作業を2回ほどされたこと。
「あんなんで正確に型が取れているのかな」と一抹の不安を禁じえなかった。
結果は1週間後、新しいクラウンができあがる時にわかるだろう。

ところで、歯科衛生士さんにはアシスタントの男性がついて、ペーストを練ったり、器具を洗ったり、片付けたりといった、細々とした雑用を担当している。
その男性の作業台の上に、歯型が山盛りになった長方形の大型ケースがどんと置かれていたが、ずいぶん年季の入ったものに見えるものもちらほら。
ま、そんなこと気にしてたら、インドで生きていけない、と自分に言い聞かせた。

気になる新たに付け替えるクラウン(被せ物)の値段だが、セラミックとシルバーを組み合わせた素材が7,500ルピー、総セラミックが1万2,000ルピーということだった。
今回割れたクラウンが、日本で4年ほど前に装着してもらった当時で、保険適用の強化プラスチック製で9000円ぐらい、セラミックを選んでいたら5万円ぐらいと言われたことを考えると、やはり割安だろう。

削って、型を取り終えるまでの治療時間は約30分。
衛生士さんに「終わったわよ」と言われ、ちょっと戸惑う。

なぜなら、ふつうクラウンが取れてしまったら、新しいのができ上がるまで、仮詰めのようなもので蓋をするのではないかと思ったからだ。
「これ、取れた土台の歯が露出しているのですが、この状態でよいのでしょうか」と衛生士さんに確認したところ、「固いもの噛まなきゃだいじょうぶよ」とのこと。
「あなたのこの歯、根の治療してるのよね。だから大丈夫なのよ~」だって、なにをもって大丈夫なのか分からないが、ネットで軽く調べてみても、このような説明もあったので、ま、大丈夫なのだろう。

治療を終えたわたしの服や髪には、消毒薬の匂いが染み込んでいた。

Pracoシステムのすごさ(予約確認メール、予約リマインドメール、受診後のフォローアップメール)もさることながら、「ナンダさん」のシステムからも次回の予約日時が、受付の女性と確認した直後に、診察前にタブレット入力したメールアドレスに飛んできて感動だった。 

わたしの歯の恩人と比較するようでなんだが、一時帰国時に通っている福岡県福津市の実家近くの歯科医院は、いまだに厚紙の診察券、次回の予約時間はその診察券に手書き、フォローアップは(予約時間になっても患者が現れない場合のみ)電話。
そう考えると、プネーのほうがずっとデジタル化が進んでいる。

最後に、シッダールタからは、セラミックの歯を入れた後に万が一壊れた時の保証のことを、ちゃんと聞いとけとどやされたことも付け加えておきたい。
 


ナンダ歯科医院の受付。
精算を待つ間、ひっきりなしにいろいろな患者に、
診察料金を督促する電話をかけていたのが印象的だった。
 


スクリーンではこの医院がどれほど先端の治療を施しているか、
説明するスライドが。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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