ブラックマネー駆逐どころか国民を潰す大パニックに:インド突然の廃貨措置

 

Posted on 19 Nov 2016 23:30 in インドビジネス by Yoko Deshmukh

この措置の一報に接したとき、まさに目を疑うとはこのことかと仰天しました。モディ首相に一番票をくれた層の人たちが、一番の犠牲者になっている、無計画な愚策ではないかと今のところは思います。



※一夜にして幻の通貨になってしまった旧500ルピー札。
 

毎晩散歩の時にチェックしているが、わが家の周辺に限っては、ATMの前で行列している人はほとんどおらず、しかも普通にお金を下ろして出てきている人もちらほら。
おそらく、このあたりに住んでいる人の多くは、日常の決済のほとんどをカード(銀行口座と直結したデビットカード)で済ませていると見られ、あまり事態は深刻ではないのかもしれない。

先週、モディ首相の一声で、突然これまで発行されていた500ルピーと1000ルピー紙幣が使えなる強硬な「廃貨措置」がインド全土に導入された。

インドのことをいつも分かりやすく記事にしていて、大好きなティラキタのブログに、この国を巡るお金の状況と、今回の騒動について、ものすごく詳しく解説してあった。

僕らが持っているルピー札はどうするんだ!!! 突然、高額紙幣が使えなくなったインド【ティラキタ駱駝通信 11月18日号

なるほど、ブラックマネーとは、こんなに凄まじいものだったんだ。
確かに、今回の政策は、こういう頭の悪そうな人たちにはてきめんに効いたろう。
だけど、これがきっかけで、本当にきちんと税金を吸い上げ、そして社会に還元できるようになるのかどうかは疑問だ。
そもそも国民に税金を支払わせたいのであれば、税制度改革を導入すべきで、いきなりの廃貨はあまりにも乱暴すぎた。

わが家の状況としては、もともと現金をほとんど持たない主義で、決済は基本的にデビットカードで行ってきたが、これからしばらく、一層現金を使わないで済むようにしようということになっている。
シッダールタの会社も給与は銀行振込だから、スタッフに迷惑をかけるような事態にもなっていないし、わたしたちの周辺は至って日常通りの生活ができている。
ちなみに団地併設のキラナ(牛乳やちょっとした食材、日常雑貨などを売る個人商店)でも、いち早くカード決済を導入してくれたので、助かっている。

また幸いプネでは、八百屋などよほど小さな店を利用したり、オートリクシャーに乗ったりしない限り、現金がなくても、ある程度は不便しない。
※バジワーラー(八百屋)やオートリクシャーワーラーたちの生活も、かなり脅かされていることだろうが。

しかし、毎日銀行の前で長い行列を作り、何時間も、下手したら1日中待ってでも、現金を手にしなければ明日の生活が成り立たない人の方が多数派なのが、インドの現状だ。

並んでいるさなかに、持病の発作や将棋倒しなどの事故により亡くなった方も50人近くにのぼる非常事態となっている。

Demonetisation: Nearly 50 people dead, but Modi govt views it as 'minor' inconvenience

そもそも、人口12億のインドで銀行口座を持っている人は約5割、うちほとんどが「口座に残高なし」、つまりまったく使われていないという。
銀行口座を持っていてもATMやデビットカードを使っている人は4割にも満たず、まだまだ現金取引が主流だ。

175 million new bank a/c in India in three years: World Bank

措置を導入する前に、こうした状況もよく熟慮すべきではなかったか。
それに、本当にすごい脱税をしているような大金持ちたちは、もともと不安定だったインドルピーなんかとっくの昔に処分して外貨などに換金しているか、世界中の不動産や株などに投資してしまっているだろうから、今ごろ涼しい顔をしてこの騒動を眺めているだけだと思うのだが。
海外メディアによる、「モディ廃貨」に対する意見も概ね同様だ。

What foreign media thinks about PM Narendra Modi’s demonetisation move

ともかく今回の一件で、モディ首相の独裁者っぷり、無計画ぶりが露わになった。
インド経済に、数年に及ぶ深い爪痕を残すことになることは間違いない。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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