Mittelstandから大手まで——インドで進化するドイツ企業のGCC

 

Posted on 20 Mar 2025 21:00 in インドビジネス by Yoko Deshmukh

記事の内容とは関係ないんだけど、写真は12年前に訪れたバンコクの寺院です。



米国企業はインドにとって最大のITアウトソーサーであり、国内のGCC(グローバルケイパビリティセンター、とは何か)設立でも主導権を握る。
一方のヨーロッパ企業は、EU域外への進出に慎重な傾向がある中、例外としてのドイツ企業とその取り組みについてまとめた記事を見つけた。

Inspired by Benz, Bosch and others, German cos lining up

メルセデス・ベンツ(Mercedes Benz)、ボッシュ(Bosch)、シーメンス(Siemens)、ドイツ銀行(Deutsche Bank)、コンチネンタル(Continental)は、いずれもインドに大規模なGCCを設立、これらは長年かけて成熟し、世界的な最先端プロジェクトをリードしてきた。
最近ではソフトウェア会社SAPのインドセンターがGCCを、航空会社ルフトハンザ(Lufthansa)は先月、インド最大のIT会社であるインフォシス(Infosys)と共同でGCCを設立すると発表、自動車メーカーのBMWは昨年、自動車用ソフトウェアとビジネスITソリューションの開発を目的に、タタ・テクノロジーズ(Tata Technologies)と合弁会社を設立している。

在バンガロール・ドイツ領事館のアヒム・ブルカート(Achim Burkart)総領事によると、近年はドイツ人が「Mittelstand」と呼ぶ中小企業も、インドに注目している。
「インドに対する偏見は根強く、長らく企業誘致を困難にしていたが、近年はドイツ政府の戦略が奏効し、国内企業にとって非常に重要なパートナーとして台頭、貿易額は年々改善している。当地のドイツ企業を訪問すると、当初はバックオフィスとして始まったものの、今では世界各地の業務に付加価値をもたらす存在になっている」と説明する。

バイエルン州インド事務所のジョン・コッタイル(John Kottayil)事務局長によれば、同州から4月に40名を超える防衛および航空宇宙分野の代表団がインドを訪問、機会を調査すると述べている。

インド・ドイツ商工会議所(Indo-German Chamber of Commerce)のステファン・ハルサ(Stefan Halusa)事務局長は、KPMGと共同で毎年発表している両国事業の見通しでは、業界や企業規模を問わず、ドイツ企業によるインドでの事業展開への関心が劇的に高まっている。
インドに投資したい最大の理由は現地市場向けの生産だが、GCC設立への投資も大幅に増加している。
「現時点ではインドへの投資理由にGCC設立および人材確保を挙げる企業はわずか17%だが、2029年までにこの割合は35%に上昇すると予想されている。人件費が依然としてGCC投資の主な理由だが、今後は政治的安定と優秀な人材の確保が要素になると指摘する企業が増えている」

たとえば自動車部品メーカーのコンチネンタルは、インドで実施している最先端技術作業の1つに、AIを使用して世界中の運転状況に関する合成データを作成している。
このデータを使用して、たとえば開発中の新しい自律移動機能の有効性を証明、現在さまざまな状況でテスト車両を物理的に運転するのに費やしているコストと時間を大幅に節約できる。
医療技術会社シーメンスは、放射線科医の効率を劇的に向上させ、腫瘍医が放射線治療計画を立てるのにかかる時間を大幅に短縮するためのAIコンパニオンのエンジニアリングと開発を、すべてインドで行っている。

こうしたドイツ企業の関係者の中には、移転価格や貿易プロセスに関する不確実性や障害の一部が取り除かれれば、ビジネス関係をより迅速に進めることができると指摘する人もいる。
コモノ・アドバイザリー(Comono Advisory)のマネージングパートナー、ヒューバート・レイラード(Hubert Reilard)氏は、インドは熟練労働者、エンジニア、科学者など、異なるレベルの知識を持つ人々が協力し合う方法をドイツから学べると語った。
「これはドイツで形式化されており、戦後ドイツの成功の核心だ」と同氏は語った。

インド政府統計(DPIIT統計)によると、累計FDI(2000年4月~2023年3月頃)に占めるドイツの割合は約3~4%で、インドへの主要投資国トップ10に入っている。

ドイツ連邦経済・気候保護省(BMWK)や、ドイツ貿易投資振興機関(Germany Trade & Invest, GTAI)が発表している統計によると、2022年のインドとドイツの貿易総額(輸出入合計)は約250億ユーロを突破し、前年比およそ18%増加。
インドはドイツにとって、アジアで中国、日本、韓国、香港に次ぐ4~5番目に重要な貿易相手国とされる。

NASSCOM報告のGCC(Global Capability Center)の規模感として、インド国内には約1,500以上のGCCが存在し(欧米企業・アジア企業・オセアニア企業含む)、2022年時点で150万人以上を雇用しているとされる
ドイツ企業のGCCはアメリカ企業に比べると数では少ないものの、近年の新規投資や既存GCCの機能拡張が年率20~30%程度で拡大中。

参照: NASSCOM – GCC India Landscape Reports

メルセデスベンツ(Mercedes-Benz Research and Development India、MBRDI)はバンガロールとプネーに拠点を置き、約7,000人以上が勤務(2022年時点)。
車載ソフトウェアや次世代EV技術の一部をインドで開発中。

参照: MBRDI Official Site

コンチネンタルは、自動運転技術の開発に向けたAIシミュレーションやソフトウェアテストを大規模に実施。
インドに3万人前後の従業員を有し、生産工場や研究開発センターを複数運営。

参照: Continental – India Operations

「SAP Labs India」はSAP最大の研究開発拠点の1つで、現在1万3千人以上のエンジニアが在籍(2022年報道ベース)。
AI・クラウド・Analyticsなどグローバル製品ラインの一部コア開発を担っている。

参照: SAP Newsroom – India

インド・ドイツ商工会議所(IGCC)とKPMGが毎年共同で行う「Indo-German Business Outlook」では、2022年版で回答したドイツ企業のうち、83%がインドでの拡大に前向きと回答。
主な理由として「現地市場へのアクセス」「コスト競争力」「ITスキルや技術力の活用」などが挙げられている。
課題としては「税制・移転価格ルールの不透明性」「インフラの不備」「ビザ・人材移動の制限」が依然上位となっている。

参照: Indo-German Chamber of Commerce – Survey Reports

NASSCOMとDeloitteの共同調査では、欧州企業(英国含む)はインドにおけるGCCを機能追加・ハイエンド化している事例が多い。
ドイツ企業のGCCについても、単なるバックオフィスではなく、R&D、デジタルイノベーション、AI/ML開発など高付加価値領域へ拡張する傾向が見られる。

参照: NASSCOM – GCC India Landscape

インド政府は「Make in India」、「Digital India」、「Skill India」などのキャンペーンや政策インセンティブにより、外国企業が製造業からITサービスまで幅広く投資しやすい環境を整備している。

インド政府と各州政府(カルナータカ州、マハラシュトラ州、タミル・ナードゥ州など)はR&Dやハイテク分野での投資誘致を強力に推進。
ドイツ企業が先進技術部門を設立することに対する税制優遇や土地取得促進策を発表している場合もある。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



Share it with


User Comments

Leave a Comment..

Name * Email Id * Comment *