ヒンディー語の気象予報で物議を醸すチェンナイ地域気象センター
Posted on 27 Mar 2025 21:00 in インドの政治 by Yoko Deshmukh
インドも例外なく、各方面で根強い分断があるのだな。写真は2023年に訪れた時に撮った、チェンナイの空です。
チェンナイの地域気象センター(Regional Meteorological Centre、RMC)では、公式ウェブサイトでタミル語と英語による気象予報を発表しているが、6か月前からヒンディー語での発表も加えていることに、地元の政治家らから非難を浴びているという記事を見つけた。
Regional Meteorological Centre in Chennai draws ire for issuing weather bulletins in Hindi too
RMCは、タミル・ナードゥ州および2つの連邦直轄領(ポンディチェリーおよびラクシャディープ)の気象サービス本部として機能しており、同地域の24時間降雨予報を英語、タミル語、ヒンディー語の3言語で提供している。
これに対し、同州内の政治家を含む指導者らが、「ヒンディー語を話さない州にヒンディー語を押し付けている」と非難している。
マドゥライの州議会議員Su. Venkatesan氏はソーシャルメディアへの投稿で、「連邦政府は州の災害救援活動への財政支援を渋るのに、気象予報をではヒンディー語を押し付けるのか」と批判した。
同州では、中央によるヒンディー語の押し付けに反対し、2言語政策を推進する動きが活発化している。
一方、RMCの関係者は、「内務省管轄の国会公用語委員会(Parliamentary Committee on Official Language)の指示に従ってヒンディー語を使用する取り組みの一部にすぎない」と説明する。
この目的のために2023年7月、指定のヒンディー語翻訳者としての職員が任命された。
インド気象局(India Meteorological Department、IMD)の地域支部としてチェンナイのRMCは、南インド地域の気象観測や警報発令、研究開発を担っている。
とくにサイクロンなどの大規模気象災害が多いベンガル湾沿岸地域において、気象警報は住民の安全確保に直結するため、複数言語での情報発信が求められてきた。
参照: India Meteorological Department
国会公用語委員会とは、インドの公用語政策を監督・推進するために設置された委員会で、ヒンディー語使用の拡大や促進に関する提言を行う。
インドの公用語政策は憲法第343条~第351条などを根拠とし、英語とヒンディー語を中心とした2言語制を基本とするが、各州の公用語を尊重するという立場も一方で保持している。
参照: Ministry of Home Affairs, Department of Official Language
タミル・ナードゥ州は長年にわたり「2言語政策(タミル語と英語)」を推進し、ヒンディー語の必修化に反対する動きが強い。
1960年代には反ヒンディー運動が大規模化した歴史があり、それが現在の州政府・政治家の言語政策にも大きく影響している。
ヒンディー語版気象情報の背景としては、RMC関係者によると、ヒンディー語版の気象情報は「インド全土の標準的な公用語の一つとして、より広範な人々に情報が届くようにするため」という。
観光客や出稼ぎ労働者などヒンディー語を理解する人々も同地域に一定数存在するため、英語・タミル語に次ぐ補助的な言語としての役割が期待されている。
しかしながら、タミル・ナードゥ州の大半の住民にとってはタミル語が主な日常言語であり、ヒンディー語は他州出身者を除くと理解度が低い。
そのため、災害時の情報伝達や周知方法において、ヒンディー語の追加がどれほど実効性を持つのかという疑問の声も出ている。
また、州政府側からは「中央政府がヒンディー語を優先するあまり、現地の言語や実情が軽視されているのではないか」という批判の声も根強い。
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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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