日本郵便の切手にもなったタミル人と、日本人との、文通による友情

 

Posted on 07 May 2016 23:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

これは、コレクター垂涎のレア切手に違いありません。



*The photo from The Better India

5月7日付けの「The Better India」で、ある日本人とタミル人との間で1970年代から長年にわたって温められてきた、文通による知られざる交流と友情について紹介されていた。

How S M Muthu Ended up Being on Japan’s Postage Stamps

The Better Indiaの記事によると、「ティルクラル」などのタミル語古典の数々を日本語訳した松永脩蔵さんとの間で、長年文通を交わしていたムトゥ(S M Mutsu)さんというタミル人がおり、2007年の日印交流年、二カ国間の友情を記念して、ムトゥさんが記念切手にデザインされたこともあったという。
現在、見ることができる日本郵便の2007年当時の記念切手に、ムトゥさんの姿は見られないが、相当なレアものに違いない。

「ティルクラル」は、推定紀元前6世紀または同1世紀に、ティルバルバルという詩人によって著されたとされ、タミル文学はもちろん、インド文学史上もっとも重要なタミル語古典のひとつとされている。

この文献の日本語訳に取り組むにあたり、松永さんは同じタミル人の友人の紹介を通じて、タミル文学の無二の愛好者であったタミル・ナードゥ州セーレム近くの村出身のムトゥさんと知り合ったと見られる。
ムトゥさんが、当時G U Popeと言う研究者により英訳されていた「ティルクラル」を、松永さんに贈ったことが、2人の友情のきっかけとなった。

長年の文通を通じて、松永さんはインドの文化や慣習についての関心を一層高め、またムトゥさんにも、日本での生活や祭事、年中行事について書き送った。
さらに英訳された日本語の本も送り、これをムトゥさんがタミル語に訳して新聞に発表するということもしていたようだ。
この一連のやりとりを、松永さんは「手紙に見る私のインド」という本に著している。

この2人の友人は、1980年に「ティルクラル」の日本語訳を終えたことを機に、マドゥライで1981年に開催された第5回世界古典タミル会議(World Classical Tamil Conference)に出席するため、松永さんが訪印した時にただ一度、対面したということだ。
2012年に某メディアがムトゥさんにインタビューしたところによれば、その後はお互いが高齢になったこともあり、再会は叶わなかった。

ムトゥさんは先月、亡くなった。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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