プネー大学日本語学科修士課程の授業を見学させてもらうの巻

 

Posted on 18 Jul 2024 21:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh

せっかく行ったのに写真を撮りそびれて帰ってきてしまったので、画像は「Just Dial」より。



プネー在住かれこれウン十年が経過したわたしが、国中でも名高いこの街の日本語教育事業に参加したことは、これまでほとんどなく、かろうじて前職で、プロの日本語教師のお手伝いをさせていただいたことがある程度。
そんな未経験のわたしに、同科を率いるManasi Shirgurkarさんから、わたしの職業である翻訳の分野で学生さんたちに何か教えてくれませんかとのお声をおかけいただいた。

とは言え、現状わたし自身が依然として翻訳や専門分野の勉強に手を出している状態なので、期待値が高いであろう学生さんたちに一体どんなことを教えられるのだろうか。
そのことを率直に伝えたところ、同科の翻訳や通訳の授業全般を統括されていて、かつテック系企業でプロの言語エキスパートとして長年にわたり、活躍されている凄腕教授Salil Vaidyaさんのヘルプとして、週に1コマ、特にネイティブが価値を付加できそうな「Guided Speaking」という科目を担当させていただくことになった。

その前に先輩の授業を見学させてもらったのが、今回の機会である。
場所は、FC Roadのプネー大学(SPPU)外国語学部棟で、ウーバーの運ちゃんはいともたやすく見つけてくれ難儀しなかった。



 

学生さんたちのほとんどは日中の仕事を持っているためか、授業時間は午前8時から10時という、当地の一般企業の始業前に設定されている。
そうした早朝にもかかわらず、教室に1歩、足を踏み入れると、みなぎるモチベーションに圧倒される。
言うまでもないことだが、法律用語など難解な語彙をご存知であるだけでなく、わたしたち一般の日本人が適当に考えたり使ったりしてしまいそうな言葉や表現にも、Salil先生から的確に指摘が入っていくさまは、むしろ「ネイティブ枠」のわたしにとって一瞬も気が抜けず、緊張感に満ちていた。

わずか2時間の見学中、わたしが心を打たれた場面は無数にあったのだが、中でもSalil先生がおっしゃった次の言葉が印象に残っている。
一、通訳は、お互いの言語が分からない人々のコミュニケーションをつなぐもの。相手の立場を思いやり、無料でもやるぐらいの精神で挑むべし
一、コロケーションや漢語・和語のつながりだけでなく、ひとつひとつの単語の背後にある歴史や文化の広がりについても熟知すべし
一、言葉やそれを使う人に対する、共感力や想像力を大切にすべし


小手先の技術だけに終始するのではなく、プロの言語使いとしての生き方をも考えさせる、Salilさんの授業は、AIやらMLやらが席巻するこの世界で、これからを生きてゆく人々に珠玉の教えだと確信している。

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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