水不足の深刻なバンガロールで伸びる再生水の需要

 

Posted on 05 Jun 2024 21:00 in インドビジネス by Yoko Deshmukh

バンガロールは水の先進都市だな。



深刻な水不足に見舞われているバンガロールでは、自治体(BWSSB)が処理済みの再生水を建設現場に供給したり、住宅コンプレックスが敷地内の下水処理設備から自治体に廃水を販売することを許可されたり、近隣の貯水池が都市部33か所からの集めた再生水で満たされたりと、水の再利用が重要なテーマとなっている。

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そうした中、廃水を飲料水に戻す技術のパイオニアとして、ボソン・ホワイトウォーター(Boson Whitewater)の取り組みに注目が集まっている。

同社の共同創設者兼CEOであるヴィカス・ブラフマーワル(Vikas Brahmavar)氏によれば、「(廃水の飲料水への還元は)現場ではなかなか行われていない。いざ行動を起こそうとする頃には雨季が到来し、実施が延期されることが毎年の繰り返しだった中、今年は水不足の危機が例年の3月ごろではなく1月にすでに始まっていたため、状況は非常に悪かった。パニックに陥ってから慌てるのではなく、持続可能なソリューションを用意しておくべきだ。」と述べている。

電子工学部卒の技術者として米系モトローラ(Motorola)に在籍後、イギリスに渡り5年ほど現地で仕事をし、帰国後は農村部の子どもたちにフッ素を含まない水を供給するための事業としての同社をゴウタマン・デシン(Gowthaman Desingh)氏と共同設立した。

その後、バンガロール最大のショッピングモールに同社製の水処理システムを設置、1日あたり10万リットルを超える水を回収し、集中冷却に使用した。

ブラフマーワル氏によると、水に関する研究は数多く行われてきたが、スケールアップが難しいため、商業製品に結びつくものはあまりない。
同氏によれば、イノベーションは付加価値の側にあるためで、つまり行政が都市の主な水源となっているカーヴェリ(Cauvery)水系の水1リットルにつき2.2パイサを請求する中、12パイサで水を供給する技術を開発しても、市場で受け入れられることはない。

これは世界中で問題となっていることであると指摘、「ロンドンのような先進都市の事例では、まず都市の人口と、その人口が排出する廃水の量を調べ、この量を産業にマッピングすることが、再生水供給の出発点となっている。一方インドの都市は長年をかけて劇的な成長の途上にあり、都市外の集中型システムがもたらし得る給水の課題を考えると、集中型インフラはもはや不可能だ。」と説明する。

この課題を克服するためには、ある建物から発生する廃水を近くの建物の淡水需要を満たすために使用できるような、近隣ネットワーク内での分散型水再生インフラがソリューションになると指摘、「こうすることで、都市は今後数十年にわたって成長を維持できる。」と、会社を通じてこのコンセプトの実現に取り組んでいる。

同社の水処理システムは、住宅コンプレックスやショッピングモール、ITパークの駐車場など敷地内数カ所に設置され、タンカーが汲み取った水が半径4キロメートル以内の産業に販売される。
これにより1日あたり少なくとも4万8,000リットルの水を節約している。

同社はバンガロールで17件、コインバトールで1件のプロジェクトを進行、現在1日あたり約83万リットルの水を販売している。

「インドでは、1人あたり1日平均約135リットルの水を消費しており、そのうち45リットルはトイレ、12リットルはガーデニングに利用されている。現在、当社が水を再利用しているのはこの2つだけで、残りはすべて排水されている。やがて排水した水を近隣の産業の要件に合わせて高品質の水に変換できれば、地下水を汲み上げる必要がなくなり、地下水源の水質が改善される。産業にとっても経済性が向上する。それが、当社がインフラとして構築しようとしているものだ。」

なぜ産業にのみ販売するのかという問いに、ブラフマーワル氏は「再生水と聞くだけで、臭く色のついた汚い水を連想する人々が多く、過剰に反応するため(マーケティングに苦戦している)」と説明する。
一方、産業用途は伸びており、現在1日あたり140万リットルの処理水を受注しているが、うち80万リットルしか供給できていないという。

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Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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