なんと、実はプネーのブランドだった「Chidiyaa」

 

Posted on 20 Feb 2024 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

自分の直感を信じて、好きなこと、情熱を傾けられることにまい進することの尊さを思います。



数日前、サリーを中心に国内の職人たちによる手織り・手染めの味わい深い商品を紹介しているアパレルブランド、「Chidiyaa」の担当者の方から、メッセージアプリWhatsApp経由で、「Chidiyaaを着ているところをビデオカメラで撮影したい」というオファーをいただいた。
今月はじめにプネーで開催された屋外イベント、「Picnic Day Out」に出掛け、同店ポップアップに立ち寄った際に、よりによって競合他社ブランド「Suta」のサリーを身に着けていたこともあり、顔と名前を覚えてくださっていたようだ。

モデルさんみたいなことはとてもできないと尻込みしたわたしは、ひとまず自分がChidiyaaのお気に入りを着たスナップ写真を撮って送ってもよいかと申し出たのであった。

その際に、担当者の方が「プネーには店舗はないけどオフィスはある」とおっしゃっていて、気になっていたところ、Indian Express電子版の本日付で次の記事が公開されており、実はプネー在住の元技術者の女性が立ち上げたブランドだったことを知り、驚いている。

An engineer, a house sparrow and ajrak: Secrets of a free-spirited entrepreneur from Pune

経営者はプージャ・ラージプート(Pooja Rajput)さん。
たびたび「Chidiyaa」のインスタグラムで、サリーやワンピースを着用している動画でお見かけしていた、謎の美女がその方だ。

名門プネー大学(Savitribai Phule Pune University)工学部を卒業後、経営学修士号を取得、8年前まではそうした経歴の持ち主であれば誰もが就く、そして誰もがうらやむ仕事に従事していた。
しかし本人は、ずっと違和感を抱え続けていたようだ。

毎日、同じ業務の繰り返しにすっかり退屈し、しかも将来、何かが変わるとも思えないことに絶望したラージプートさんは、「自分が好きなこと、本当にやりたいことは何だろう」と考えるようになった。
その答えは、「サリーを毎日のように着て、みんなに褒められること」。
実際、休日など時間があれば、面白いデザインのサリーを探して、手工芸品フェアをよく覗きに行っていたそうだ。
控えめで色や柄が多用されていないものを好むラージプートさんは、そこに市場のギャップがあると目を付けた。

こうして、唯一無二のアパレルEコマース系スタートアップ、都会ではあまり見かけなくなったイエスズメにちなむ「Chidiyaa」のアイデアが生まれた。
「Chidiyaa」では、インド全土の職人の手による古典的なシルエットと天然素材の生地やプリント、織りを用いた商品を販売している。
その主力商品は、洗浄、捺染、浸漬、染色を含む18もの段階を経て完成するアジュラック(Ajrak)と呼ばれる伝統工芸品だ。

中でも、トンボや三日月などのモチーフは独自のデザインとして開発した。
そうそう、わたしが「Chidiyaa」に魅せられた最初のきっかけも、どことなく日本の浴衣を思わせる「トンボと三日月」があしらわれた、綿のサリーやワンピースたちだったな。

こうしてChidiyaaは、国内のアパレル市場を担う「Make in India」ブランドの1つに認定された。
同市場は2023年半ばに920億ドル規模に達し、2030年までに倍増すると予想されている。

現在はデリーとハリヤーナー州グルガオンに店舗を展開、3月中旬とことし後半にも2~3店舗を新規開店する予定がある。

コロナ禍で実店舗は一時閉鎖することになったが、オンラインショッピングが「新しい日常」になったことで、かえって大成功を博することになる。

当初、プネーの自宅寝室を倉庫として使っていたラージプートさんだが、現在は3,500平方フィート(325平米)の広い倉庫と、35万人のオンライン顧客ベースを持つまでになった。
一方、変わらないのは、デザインのすべてを担うファッションデザイナーとしてはもちろん、ソーシャルメディアの管理者もラージプートさんが担当しているということ、そして立ち上げ当初からずっとついてきてくれている、腕利きの職人たちだという。

わたしが住むエリアの目と鼻の先であるコーレーガーオン・パーク(Koregaon Park)にお住まいということで、いつかお目にかかりたい。

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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