史上最高の効率で太陽エネルギーを変換する素材を発見

 

Posted on 11 Nov 2023 21:00 in インド科学技術 by Yoko Deshmukh

太陽資源が豊富なインドが本気を出してきたな。



インド工科大学ボンベイ校(IITボンベイ)の研究チームが、マリーゴールド形のカーボンナノ構造をした新素材が、これまでで最高の効率で太陽エネルギーを熱エネルギーに変換することを実証した。

Newly designed Marigold-like nanostructured material shows record high efficiency of converting sunlight to usable heat

ナノ構造ハードカーボンフローレット(nanostructured hard-carbon florets)またはNCFと呼ばれる新素材は、太陽熱を吸収し、また蓄熱できる熱量を飛躍的に向上、かつてない87パーセントという変換効率を示している。
具体的には紫外線、可視線、赤外線成分の97パーセント以上を吸収、これを熱エネルギーに効率的に変換し、空気または水に効果的に伝達できる。
研究チームによれば、NCFは空気を室温から摂氏60度まで加熱、これにより無煙の暖房ソリューションになることを実証し、レーやラダックなど、太陽光が豊富な寒い気候条件の地域での実用化に向けて試験を重ねる。

チームによると、太陽熱変換用途として従来利用されているコーティング材は、クロム(Cr)膜またはニッケル(Ni)膜を基材としている。
陽極酸化クロムは重金属であり環境に有害な一方、Cr膜とNi膜はともに太陽熱変換効率は60~70パーセント程度にとどまる。
一方、NCFは主に炭素でできており、製造コストが安く、環境への負担も少ない。

太陽熱エネルギーを利用可能な熱に効率的に変換するには、入ってくる光または光子パケットの大部分を熱にうまく変換する能力(光子熱化)、および熱伝導率や輻射による損失なく熱を保持する能力という、2つの重要かつ対照的な特性を備えた素材が必要となる。

入ってくる光子が素材に衝突すると、その原子が振動するフォノンという現象が起こる。
フォノンは物質中を伝わり、全体に熱を広げる。
このように熱伝導率が高い素材は熱をより速く拡散するが、その分、伝わった熱の大部分を失う。
そのため、優れた熱吸収体とは、高いフォトン熱化と低いフォノン熱伝導率を備えている必要があり、NCFはまさにそうした性質を持っている。

研究チームによると、相互に結びつく炭素が小さな円錐を形成するNCFのナノ粒子構造は、短距離では秩序構造を持ち、長距離では無秩序な構造を持つ。
したがって、光エネルギーがNCFに吸収されると、この短距離秩序が強いフォノン活性化(秩序格子内の振動)を引き起こす。
強いフォノンを持つものはすべて、エネルギーの伝導効率も高い。
一方のNCFでは、長距離無秩序がそうしたフォノン波を散乱させるように作用するため、フォノンの熱伝導率は低くなる。

その高い熱変換効率に加え、NCFの持つ利点としてはその加工性にある。
化学蒸着と呼ばれる技術を使用して、炭素は非晶質樹木状繊維質ナノシリカ(amorphous dendritic fibrous nanosilica、DFNS)の基板上に堆積され、NCFを形成する。
その原料は容易に入手でき、また技術は容易に拡張できるため、大規模な商業的製造を安価に行うことができる。
製造後のNCF、表面を粉体塗装する際と同じようにスプレー塗装できるため、塗布とメンテナンスのコストも削減される。

研究者らは、NCFを塗布した中空の銅管内を流れる空気を346ケルビン以上に加熱できることを示した。
また、これまで記録された最高水準となる、186パーセントという効率(NCFの熱だけでなく大気からの放射熱も吸収)で水を蒸気に変換し、浄化する能力も実証している。
これにより1メートル四方のNCF塗装は、1時間に5リットル、1日あたり42リットルの水を摂氏80度まで加熱でき、一般的な病原菌に対する消毒にも十分有用である。

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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