300エーカーの「私有地」を自然保護区にしてしまったご夫妻

 

Posted on 08 Mar 2016 23:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

インド中の大富豪が、この例にならうと、インドは砂漠とジャングルと山岳に戻るかな。



*The photo from Indiatimes, where the article is referenced.

インドで土地を購入する目的のひとつに、将来の地価上昇を見越した投機があると思うが、「お金」でなく「自然」に投機して成功した素敵なご夫妻の話が、インディアタイムズ紙ウェブ版に掲載されていた。

Couple Buys 300 Acres Of Barren Land, Converts It Into India's First Private Wildlife Sanctuary

このご夫妻は、インド南部のカルナータカ州コダグ(Kodagu)県で、見捨てられ、荒れ果てた農地300エーカーを購入、25年かけて、この土地を、おそらくインド初となる民間自然保護区として「変貌」させた。
いや、「原状回帰」させたと言うほうが正しいかもしれない。

このご夫妻、パメラ・マルホトラ(Pamela Malhotra)さんとアニル・マルホトラ(Anil K Malhotra)さんは、取材の数日前にも、敷地内で十数頭の象が群れで移動している風景に遭遇したと語る。
「Save Animals Initiative(SAI)」自然保護区と命名されている、この土地では、象のほかトラ、ヒョウ、シカ、またヘビなどの爬虫類、そして野鳥など、絶滅危惧種も多く含む多様な生態系が営まれている。

アニルさんは大学進学を機に渡米し、不動産業や飲食業などの分野で働いていた時にパメラさんと出会い結婚、新婚旅行で訪れたハワイの大自然を気に入り移住した。
ところが1986年、父親の葬儀に出席するためインドに一時帰国したアニルさんは、ガンジス川上流のハリドワールで森林破壊が進み、河川が汚染されているにも関わらず、誰も問題意識を持っていない実態に恐怖したという。

これをきっかけに、「カネのためでなく、人にも、動物たちにも安全な水資源を取り戻す」ことを決意、特に水源地近くの自然を保護し、再生させることを目的とした土地の取得を目指しインド国内各地を探索、ようやく現在の場所に辿りついた。
そしてハワイで所有していた財産を売却し、幾多の困難を乗り越えて、この土地を確保した。

その後、頻繁に農薬を使用する農法しか知らない近隣の農業従事者への教育、またトラなどの野生動物に怯える周辺住民との交渉や、密猟者の取り締まり、また大企業には、自然環境保護を目的としたCSRの一環としての土地取得の働きかけなどの活動を続けている。

今後も経済成長を続ける見通しの高いインドでは、土地の購入はもっとも効果の高い投資手段のひとつだが、「土地」とはもともと自然に属するもの。
その発想を突き詰め、また実行に移せるだけの力のあるご夫妻に憧れる。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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