*Photo from Mid-Day.
マハーラシュトラ州西部、すなわちムンバイ、沿岸部のコンカン地方、そしてわたしの住む街プネでは、今年のモンスーンの少雨の影響で、最悪の場合は来年のモンスーン季にまとまった降雨が得られ、ダムの水量が十分に貯水されるまでは、計画断水が実施されることになり、市民生活に大きな影響が及んでいる。
筆者の自宅も、築年数の経過した古いアパートであるため住民共同の貯水設備が十分でなく、計画断水になるとてきめんに蛇口から水が出なくなってしまうため、自宅で独立した貯水タンクを設置するなどして断水中でも最低限の水が使えるよう対策を施しているが、やはり来年までの給水状況の雲行きが心配である。
われらジャパンが誇るTOTOのトイレは、近年大規模に改築され近代的になった、ムンバイのチャトラパティ・シヴァジ国際空港ターミナルでも導入されている。
さて本日は、インドが世界に誇る工科大学、IIT(Indian Institute of Technology:インド工科大学)ボンベイ校の研究チームが、もう1歩進んだ「水を使わないトイレ」を開発したという時勢柄とても心強い話題を、
NDTVの記事からご紹介したい。
「Dry San Hygienic Rural Toilet」と名付けられたこのトイレ、その名の通り、現状のプネなどよりもはるかに、かつ恒常的に水資源の供給が依然として不安定な農村部での導入を目指した、水なしでし尿を処理できるとする「ドライトイレ」だ。
しかも1台あたり7000ルピーほどと安価で導入できる、まさに頭脳派の「ジュガール(Jugaad:形にとらわれない、安価で画期的な発明)」の結晶だ。
同工科大学のキショール・マンシー(Prof Dr Kishore Munshi)博士らチームが率い、インド飲料水および公衆衛生省(Ministry of Drinking Water and Sanitation)が出資、IITボンベイ校のインキュベート企業「CTech」が設計を手掛けて2014年に完成したこのトイレ、今後広く農村部に展開していくことで、特に女性や子供のための公衆衛生環境の整備に役立てられていく。
農村部のトイレ不足は深刻な問題であり、公衆衛生環境の整備不全は、国民の健康上の問題はもちろん、環境面でも大きな脅威となっている。
このトイレ、通称「Dry San」は特許取得済みの設計として、し尿を非化学的な方法である自然好気性分解することによって、農業に必要な資源である肥料に作り変える機能も有している。
また爆発事故につながる有毒ガスを一切発生させず、メンテナンスの必要性がほとんどない点も注目である。
「5人家族が毎日このトイレを使用した場合、し尿槽の清掃は8〜10年に1回だけでよく、かつ中身は肥料としてすぐに使用できる状態になっている」研究チーム。
便器の素材については、「インド全土のトイレを調査して回った結果、陶器は破損や劣化などで、いずれ使えなくなってしまう可能性が高い。そこでステンレススチールを採用した。実用化に先駆け、IITボンベイ校キャンパス内で作業する土木作業員らに1年間使用してもらい、試験した。現在、ムンバイ自治体(BMC)から、スラム地区への設置を打診されている」
このドライトイレは、様々な寸法で用意され、また誰もが正しく利用できるよう簡単な説明書きもついている。
し尿が完全に分解されるということは、悪臭も発生しないだろう。
あとは、自分のためにも他人のためにも、トイレをきれいに使う心がけを、みんなが持ってくれるようになればいいな。