交差点で商いをする物売りたちのために尽くすリクシャーワーラー

 

Posted on 03 Apr 2017 23:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

厳しい炎天下の中で、生きるために交差点で物を売る人たちも、物乞いたちも、同じ人間です。ちゃんと考えたことあったかな。



資本主義社会に生きるわたしたちの多くは、収入が上がれば、それに見合った支出をするようになり、やがて上がった支出に見合うよう、もっと収入を得なければならない、という強迫観念にエンドレスに囚われ、大半の人生を過ごしているかもしれない。
少なくともわたしは、時々そのような圧迫感に踊らされ、売上の高低に一喜一憂しているひとりだ。

しかし実際に「生きる」ということを考えると、食うに困らず、狭くとも快適な住居があり、清潔なひと通りの衣服が確保できていればよいのかもしれない。
特にプネーに住んでいると、そこらで入手できる食材を使った自炊は当たり前として、安アパートを調達してそこを整頓して保ち、人付き合いを厳選すれば、本当に最低限の収入で立派に楽しく暮らしていけることに、いつでも気づかされる。
「自転車操業」を不要に招いているのは、結局はハムスター化した自分自身なのかもしれない。

というのも、「The Better India」が、このような記事を紹介していた。
わたしは、こうした記事を目にするたび、「人はもっとシンプルに生きられるんだ」ということを教えてもらっている。

首都デリーのオートリクシャーワーラーが、日に日に暑さを増す中、路上で商売に勤しむ人々に、無料で食べ物や水を配り、必要な時には無料で病院への送迎を買って出ているという話題だ。

A Delhi Auto Driver Is Making The Summer Bearable for Street Vendors by Distributing Food & Water

オムカルナート・カターリア(Omkarnath Katharia)さんは、自身が営業するルート上で、激烈な炎天下から身を隠すすべもなく、交差点でおもちゃや本、洗面用具などをの商いを続ける路上の物売りらを放っておけない。

暑くても、寒くても、モンスーンの激しい雨が降りつけようと、屋外で商売せざるを得ない自らの姿と重ね合わせ、むしろさらに厳しい境遇にいる彼らに胸を痛め、2012年ごろから無料で食事や水の提供を始めた。
さらに暑さや寒さで体調を崩した人を、無料で病院に送迎している。

そうしたオムカルナートさんの行動に影響を受けた人たちが、車内に設置した募金箱に寄付金を投じるようになり、それを元手にして今年もこの試みを続けている。

ある日オムカルナートさんの運転するオートリクシャーに乗客として乗車した、ある女性は、信号待ちの時に不思議なことに気づいた。
運転手が、物売りたちに水やスナックの入ったパッケージを手渡しているのだ。

「その日は交通量が多く、私たちは長いこと立ち往生していました。そのおかげで彼と、かなり長いこと会話をする時間を持て、彼が純粋に人の役に立ちたいという気持ちで活動していることが手に取るように分かりました。小さなオートリクシャーの車内には、十分な量の水と、スナックの入ったパッケージが所狭しと積んでありました」

その後、話が進むにつれて、オムカルナートさんが最近、タクシー運転手に転職するため、ローンを組んで乗用車を購入したことを知った。
「毎月9,000ルピーのローンを4年間背負ってでもタクシー運転手になろうと決めたのは、他でもなく乗用車の方がより多くの水や食料を詰めるとの考えからでした」

女性は現在、オムカルナートさんの活動を支えるクラウドファンディングを立ち上げ、資金を募っている。

人間の欲望が肥大化した現代の資本主義至上社会で、オムカルナートさんのような気持ちを持てる人は稀だ。
わたしも、つい無駄遣いをしてしまう時が多い。
そうした生き方も、どこかで誰かのためにはなっているに違いないので否定しないが、わたしは常に根のところで、もう少し上手なお金や資源の巡らせ方を考える癖をつけようと思った。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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