みんなで少しずつ持ち寄る、原始的で効率的な分かち合い

 

Posted on 17 Jan 2017 23:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

「誰もが誰かのために何かしたいと思っているのだ」という言葉、そしてそのきっかけづくりをしている人たちに、感謝と尊敬の念を込めて。



先日、ひさしぶりに外食をする機会があった。
たまたまよくラウンジを利用していたファイブスター・ホテル内にある、高級感あふれるベジタリアン・レストランが、ブッフェを850ルピーとディナーにしてはリーズナブルな価格で提供していたので、体験してみることにした。
この店の詳細は別の記事にしようと思っているが、ここのブッフェは、サラダなどは自分で取ってくるが、メインコースは豊富なメニューから好きなものを選べ、ボーイさんが作りたての温かい料理を運んできてくれるというスタイル。

さすがホテルだけあって、どの料理もおいしく、存分に楽しんだものの、わたしもシッダールタも、あまりたくさん食べるほうではない。
予期していた通り、注文した料理が余ってしまった。
食べ放題のブッフェだから難しいことは承知でボーイさんに「食べ残しを持ち帰ってよいか」と訊ねたが、予想通り却下されてしまった。
事情は理解できるので、これは仕方がない。

しかし近年、このようなファイブスター・ホテルを中心に、大量の食べ残しが発生しがちなパーティ料理やブッフェ料理を、その日のうちに必要な人々におすそわけするルートが、様々なNGO団体の努力により確立されつつあるという話題をよく目にする。
ASKSiddhiでも、「The Better India」の記事を何度か紹介したことがある。

ストップ食品廃棄!!おいしいものは分け合おうと働きかける人たち - ASKSiddhi Posted on 21 Feb 2016
「ノーモア・食品ロス!」立ち上がるダッバーワラーたち - ASKSiddhi Posted on 04 Jan 2016
食べ物に困った人たちのための「大きな木」、「公共冷蔵庫」を置いたケーララの女性 - ASKSiddhi Posted on 26 Mar 2016

富める者も貧しい者も、自らが持っているものを分け合おうという気持ちが、社会を居心地のよいものとしていくのだ。

昨日付「The Better India」では、ウッタル・プラデーシュ州バンデルカンド(Bundelkhand)県のマホバ(Mahoba)という小さな町で、飢餓をなくし食糧を分かち合う試みの一環としての「ローティ銀行(Roti Bank)」が紹介されていた。

A Small Town in Uttar Pradesh Is Teaching the World How Hunger Can Be Beaten with One Small Step - The Better India

この町の住人たち500世帯から、毎日ボランティアが少しずつ食料を集め、必要とする人たち1000人以上に配っている。

元ジャーナリストのターラ・パトカル(Tara Patkar)さんを中心とした10名の有志が集まって2015年に結成した「ローティ銀行」。
「空腹を抱えたまま眠る人々を放っておいては、あらゆる観念も哲学も無意味だ」を理念としている。

人々から集めた食料は、町中の商店で店主の同意を得た上で特設したボックスに分配され、必要とする人々がいつでも取り出せるようにしている。

食糧の提供を希望する家庭では、毎日の調理の際にローティ(平焼きパン)とサブジー(おかず)を少し余分に作ってパックする。
提供する分量は、完全に各家庭の裁量で決めてよい。
これをボランティアが受け取り、ボックスに入れて回るという仕組みだ。

当初40世帯だった協力家庭も、いまやほぼ町全体に広がる500世帯にまで拡大、「誰もが誰かのために何かできることをしたいと思っている。特別なことではないのだ」ターラさん。

善意の連鎖は学校にもおよび、子供たちが各家庭から弁当を持参する際に、少し余分に詰めてくるようになった。

「ローティ銀行」の受益者は町の隅々に広がり、電気も水道も、医療サービスも不足しがちな中、最低限の生きる権利である食べ物だけは、誰もが困らないまでになった。
この町の成功例に触発され、マディヤ・プラデーシュ州インドールやボーパールなどの大都市でも、「ローティ銀行」が導入され始めている。

食事を前にして、その恵みに感謝するとともに、今この時、食べられない人がいること、その人たちの口にも入るために、自分に何ができるのかを考える習慣をつけたい。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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