観光客ボイコット、40年前のゴアでも

 

Posted on 24 Jul 2024 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

怒りをぶつける相手が違うとは思うけれど、不満も分かります。



スペインの観光地で、年々高騰し続ける賃料や物価に苦しむ地元の人々が、観光客らがその「元凶」であるとして、水をかけるなどの暴挙に及んでいる光景がネット上に出回っているが、およそ40年前のゴアでも、同様に観光客ボイコットがあったらしいことを知った。

Overtourism: 40 years ago, Goans protested with cow dung and rotten shrimps

37年前の1987年12月、ゴアのダボリム(Dabolim)空港に初めて、西ドイツからの団体観光客を乗せたコンドル航空(Condor Airlines)が着陸した。
その時、「自警団(Jagrut Goenkaranchi Fouz)」を称する活動家らが、観光客らをビーチリゾートに運ぶため動き出したバスに、牛糞や腐ったエビなどを投げつけた。
そして観光客の殺到に抗議して、ドイツ語で作成した「観光客は帰れ」というメッセージの書かれたビラを配ったということだ。

しかし大挙して押し寄せた観光客は、この不運なドイツ人たちが初めてではなかった。
1970年代、ドレッドヘアのヒッピーたちはオンボロのバスに乗り込み、マリファナを吸いながら陸路を旅し、1万2,000キロの「ヒッピートレイル」の終点とされたゴアを目指した。
ビーチを占拠したヒッピーたちは、満月のレイブパーティーや、ビーチでのマリファナ売買に興じた。

こうしたヒッピーたちが去るころ、ゴアはすでに観光客で溢れかえっていた。
1985年には77万5,000人の観光客がゴアを訪れ、うち外国人が12パーセントを占めていた。
また当時は連邦直轄領だったゴアを訪れる観光客は、インド全体の7.4パーセントを占めていた。

1985年から2002年まで、前年比で大幅な成長を続け、2002年にはゴアを訪れる観光客数は130万人に達し、うち16.8パーセントを外国人が占めた。
右肩上がりに増え続ける観光客に対する地元住民の不満はますます募り、政府の観光開発計画とそれに伴うゴアへの観光客の流入に強い抵抗を抱くようになっていった。

このようにして世界的な観光地となっていったゴアについては、国内外のメディアがアシッドハウスパーティーやレイブパーティー、そして児童売春の巣窟になっていると報じ、また「高級ホテルは1軒で村5つ分に相当する水を消費し、そこに宿泊する客1人で1日にゴア人28人分の電力を消費している」と指摘した。

1961年のボルトガル解放時には2軒しかなかったホテルも、1990年代半ばごろからの政策変更を境に激増、2024年1月31日現在、正式に登録されているものだけでゲストハウスも含め7,538軒に上る。

またゴア州は国内で唯一、外国からのチャーター便の観光客を受け入れている州である。
2022年から2023年にかけて、ロシア、カザフスタン、ドイツ、イスラエル、キルギスタン、英国、中東からのチャーター便がおよそ341便ゴアに着陸、うち2023年にダボリム空港を利用した乗客は700万人、4万8,195回の航空機の発着を処理した。
また新たに建設されたマノハール(Manohar)国際空港は370万人の乗客と1万3,037回の発着を処理している。

2024年度のゴア州観光振興・管理・規制法案(Goa Tourism Promotion, Management and Regulation Bill 2024)によると、同州を訪れる観光客の数は住民の人口を大幅に上回っており、政府は州内において、持続可能で環境への負荷が少なく、住民と観光客の両方に有益な方法での総合的な観光計画および開発を提唱している。
観光は州の財政に大きく貢献しているが、カジノ目的の観光客や、路上で料理をし、ビーチベッドで寝泊まりし、観光産業にまったく貢献しない滞在者について特に疑問が投げかけられている。

年末に開催されるサンバーン・フェスティバル(Sunburn Festival)には、毎年4万人近くの観光客が訪れるが、麻薬、アルコール、騒音公害など、さまざまな論争の的となっている。

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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