バングラデシュのテキスタイル産業の今

 

Posted on 15 Feb 2024 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

原料の産地であることや、優れた伝統織物があることが、「Made in Bangladesh」の価値の見直しにつながっていけばいいな。(The image is from Wikipedia.)



世界第2位の衣料品輸出大国となったバングラデシュの状況を克明につづる記事が、そのままインドに当てはまるようなデジャブを感じながら読んだ。
ただしインドの場合は国際市場はもちろんのこと、海外在住インド人による国産製品への需要、また国内の高所得層からの厚い需要もある。

Bangladesh’s Garment Industry: Future growth in a changing world

繊維とアパレル分野が牽引する、めざましい経済成長を遂げたバングラデシュの衣料品産業のルーツは、独立直後の1970年代にさかのぼる。
当時は主に国内需要を満たすことが優先され、その後は経済改革と政府による戦略的策定を経て、バングラデシュが世界市場に参入する道が開かれた。

1980年代に始まった経済改革は、バングラデシュのアパレル産業の形成に重要な役割を果たした。
政府は同分野への海外投資を誘致し、有利な事業環境を促進するため、減税、機械の免税輸入、輸出手続きの合理化など奨励策をはじめとする政策を打ち出し、衣料品産業は急成長した。

さらに高い人口密度と低い賃金による、豊富でコスト効率の高い労働力が、生産コストの最適化を求める国際的なアパレルブランドやメーカーを惹きつけ、バングラデシュは世界中の消費者に安価な衣料品を供給できるようになり、またそうした製品に対する持続的な需要を促進した。
国際貿易協定に参加したバングラデシュの衣料品輸出はさらに加速、また一般特恵関税制度(GSP)などの協定により、主要市場において関税上の優遇措置が適用され、輸出量はますます増加した。

一方、アパレル産業の急速な拡大により、労働条件と労働者の権利に対する懸念が高まった。
2013年に縫製労働者1,000名以上の命を奪ったラナプラザ(Rana Plaza)崩壊事故をきっかけに、国際的な圧力による安全基準と労働者の福利厚生の改善が求められ、そうした問題に対処するための意識と取り組みが拡大した。

また環境の持続可能性については、生産プロセスにおける水、化学物質、エネルギーの過剰な消費、また二酸化炭素排出量を削減するため、投資をはじめとする持続可能な事業慣行への要求が高まっている。
こうした課題や、コロナ禍での需要急低下といった試練を乗り越え、バングラデシュのアパレル産業は回復力と適応性を示している。

バングラデシュの衣料品製造プロセスにも、生産システムに自動化、人工知能、データ分析を統合することで、効率の向上、コストの削減、品質の向上が図られる、いわゆる「インダストリー4.0」革命が起きている。

環境意識の高まりに応えて、衣料品業界では持続可能な事業への大幅な移行が見られるようになり、たとえばリサイクル材料の使用、水消費量の削減、廃棄物管理戦略の実施など、環境への負担の少ない方法が採用されている。
また公正な製造慣行を採用することにより、倫理的義務を果たし、環境意識の高い消費者の要求に応え、国際基準に準拠している。
衣料品産業が環境に与える影響は世界的な懸念事項であり、すなわち倫理的な製造とは、環境負荷の少ない生産プロセスの採用、水とエネルギーの消費量の削減、廃棄物の最小限化が伴う。
消費者の嗜好も持続可能で倫理的に生産された製品へと移行しており、環境的および社会的な責任を果たしたファッションへの需要は高まっている。

このように持続可能な慣行と倫理的な製造は、結果としてバングラデシュの衣料品産業の回復力を高めている。
労働者の権利問題に取り組み、職場の安全を確保することは、ストライキや事故による混乱を防ぐことにもつながる。

こうした変化と、電子商取引とデジタルプラットフォームの台頭により、小売業界の状況は一変、バングラデシュの製造業者は、オンライン販売チャネルからデジタル設計および生産プロセスに至るまで、デジタル変革を取り入れることで、変化の大きい消費者トレンドに敏感に対応できるようになっている。
オンラインプラットフォームにより、バングラデシュ発の衣料品を世界中の顧客に届けることが可能となり、衣料品産業は消費者直販(DTC)モデルを採用して中間業者を排除、メーカーはブランディング、価格設定、顧客関係をより自由に管理できるようになった。

当然、持続可能性への対応、エネルギー消費などの気候変動に関する問題は課題としても顕在し、またベトナムやトルコなど新たな生産拠点として頭角を現す国々との競争も激化している。

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Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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