ムンバイにある「シオンの丘」、サイオンの謎
Posted on 23 Feb 2016 23:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh
マラーティー語でシーウ(शीव)という地名もあるようですが、駅名にもなっているサイオンが通っています。
*Sion Station, the photo from a copyright-free space.
ムンバイには「サイオン(Sion)」という地区がある。
ムンバイ・ローカルのサイオン駅も通り、アジア最大のスラム街とされ、現在は観光地化しつつあるとされるダラヴィ(Dharavi)に隣接した、喧騒あふれるこの地区は、かつてプネからムンバイ国際空港へ向かう際には必ず通過するポイントだった。
歩行者、バイク、オートリクシャー、乗用車、トラック、時には牛までもがごったがえす、活気に満ち溢れたこの一帯は、同時に最も予測の効かない大渋滞ポイントでもあるため、はまってしまった場合には車窓からゆっくりと道行く人たちを観察するのが常だった。
空港連絡高架道路(Sahar Elevated Access Road)が開通した現在は、通る機会も減ってしまった、このサイオン地区。
聖母マリアが微笑むこじんまりとしたキリスト教会を、道路沿いにちらりと見かけることもあったものの、それとは比較にならない密度で、いかにもヒンドゥ教徒がやっている風の「ラーマ・クリシュナ」だとか「シヴ・クマール」だとかの店がひしめき、また長い上衣に身を包んだイスラーム教徒たちが闊歩している。
通りには大音量で、女性歌手のヒステリックな甲高い声と、タブラーか打楽器のズンドコいう音がドミネートする、ヒンディ語の歌謡曲が流れている。
こういう雰囲気なので、かねてから「なぜ、この場所にシオニズムに関係のある地名が付いているのだろう」と不思議だったのに、通り過ぎた途端にすっかりその疑問自体を忘れてしまっていた。
ウィキペディアによると、16世紀中ごろにポルトガルがボンベイ湾に浮かぶ島々を占領した際、現在のサイオン駅付近の丘の上に教会を建てたことから、エルサレムにある「シオンの丘(「サイオン」は英語読みにならったもの」)にあやかって付けた地名が由来ということになっている。
そもそも、ここを「シオン」と読めばよいのか「サイオン」と読めばよいのかも分からなかった、無知・無学なわたしであるが、ことムンバイに関しては「サイオン」と読むのが正しそうである。
まるでダラヴィへの序章のようなミニカオス、サイオン。
もしかすると奥深くに潜入すれば、現代のシオニストたちの集会が繰り広げられているのかもしれない。
なぜ、古い疑問が不意に胸に蘇ってきたのかと言うと、本日付の「The Better India」に、サイオン駅で若者らが中心のボランティア・グループ「ダイ・ハード・インディアン(Diehard Indian)」が清掃・美化作業に取り組んだという記事が、たくさんの写真とともに掲載されていて、思わず微笑ましく眺めていたからだ。
やはりサイオン駅の汚さは凄まじかったらしく、参加した若者のひとりは「ここをピカピカにできたんだから、インドのどんなところだって平気だ、自信を持ってきれいにしに行くよ」などと話している。
この清掃・美化活動は、実に2014年12月から毎週末かけて実施されていたというから頭が下がる。
仕上げに描かれた楽しげな壁画が、現在は駅を飾っている。
実物を見に行く機会がこれからも訪れるかどうかは分からないが、せめてそれまでは、ぜひこちらから、写真をご覧いただけたらと思う。
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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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