ストップ食品廃棄!!おいしいものは分け合おうと働きかける人たち

 

Posted on 21 Feb 2016 23:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

人として最も悲しい行為のひとつは、食べ物を捨てるということに違いありません。そしてポータブルなフリーズドライ技術の開発など、日本が本領発揮できる分野かもしれません。



*The photo is just for an image, from a copyright-free space

日本のコンビニやスーパーなどでは、消費期限の切れた、もしくは切れる寸前の弁当や総菜類、またパッケージ食品では時には期限が十分にあるものでも、見切りをつけて店頭から撤収し、機械的に廃棄してしまうことが、業務としていわば規則化しており、そこに「良し悪し」や「人としての感情」が入り込む余地は、あまりないようだ。
2月初旬に「コンビニやスーパーで売れ残った恵方巻の大量廃棄」が、ネット上で大きな物議を醸していた。
インドのように、小さな子供を含めた路上生活者に遭遇することが日常ではない日本で、人々が期限切れの食べ物を目の前にして、その行方に関心を持ち始めていることは、少なくとも前向きな傾向なのかもしれない。

さて、わが街プネでは現状として、スーパーの棚にできあいの料理が陳列されているようなシーンは、まだあまり見かけない。
これは、気候が暑い地域が大半を占めるインドにおいて、もともと家庭料理そのものが、早くてもその日の朝に作られた新しいものでなければならないという感覚があり、(鮮度管理が確立されているか不安であるという実質的な問題も含めて)いつ作られたか分からないような商品に、手を伸ばす人が少ないことも背景にある。
ムンバイの弁当配達人、ダッバーワーラーたちが現役で大活躍している点からも、これはうかがい知ることができる。

また、たとえばレストランで料理を注文し過ぎてしまった場合、ほとんどの店で客に持ち帰りを許してくれる。
持ち帰る側のわたしたちも、遅くとも翌日までには消費するし、食べる時には念のため熱を加えてからにするので、ほとんど問題はないと思われるのだが、日本ではなぜか、このような食べ残しの持ち帰りも不可としている店が多い。
持ち帰った客が万一、食中毒などを訴えた時のことを恐れているのだろう。

一方で、インド人はパーティ好きである。
結婚式は言うに及ばず、子供の命名式や誕生日、また企業でも創立記念日やプロジェクト成功記念など、機会を作っては会場を借りて大人数が集まり、町評判のレストランからケータリングを呼ぶなどして、おいしそうな料理の数々をブッフェスタイルで楽しむ。

ところが、そうした豪華なパーティの後に必ずと言っていいほど発生するのは、大量の食べ残しだ。
来場者に持ち帰ってもらおうにも限度があり、ほとんどが無駄になり廃棄される運命にある。
きらびやかな会場の真裏には、ひもじい思いをした子供たちが、物乞いを強いられながら生活するスラム街があったりする、そうした社会であってもなお、である。

この矛盾に憤り、パーティ料理の食べ残しを引き受けて、必要な人々に食べてもらう橋渡しをしている団体が、近年増えている。
2月20日付「The Better India」では、うち10団体をリストアップしていたので、こちらにも抄訳の上ご紹介したい。

1. Feeding India デリーを中心に国内16都市
個人宅から結婚式会場、レストラン、企業オフィスまで、食べ残し料理を回収する非営利団体。24時間365日、回収依頼を受け付けている。デリーのほか、バンガロール、ブバネシュワル、チャンディーガル、チェンナイ、ファリダバード、ゴア、ノイダ、グルガオン、ハイデラバード、インドール、ジャイプール、コルカタ、ムンバイ、ナグプール、プネ、ソーランで展開。なんとGoogle Playにアプリがあり、ダウンロードした上でアプリから依頼できる。
電話:098-7117-8810

2. Robin Hood Army デリーNCR(首都圏)地域ほか国内8都市
レストランやパーティ会場、個人宅から料理を回収する。全国19都市に2000人以上のボランティアが在籍する。デリーNCRほか、コルカタ、ムンバイ、ハイデラバード、バンガロール、チェンナイ、プネ、ジャイプール、ジャバルプルで展開。また、パキスタンにもネットワークを持つ。
詳細の問い合わせ:Robin Hood Army

3. Roti Bank by Dabbawalas(ダッバーワーラー) ムンバイ
シックスシグマ(Six Sigma:100万回に3.4回という驚異のエラー率を謳う品質管理手法)級とされる奇跡の弁当配達人として知られるダッバーワーラーたちも立ち上がった。「Roti Bank」では、食べ残しの新鮮な食品を回収し、本領発揮したスピーディかつ正確なサービスで、必要としている人々に届けている。家庭から出る少量の食べ残しにも対応可。
電話:098-6722-1310または086-5276-0542

4. Mera Parivar グルガオン
もともと教育や職業訓練の分野で貢献する非政府組織(NGO)だが、グルガオン地域で発生した食べ残し料理の回収も受け付けている。回収した料理は学生たちのもとへ届けられる。
電話:0124-411-1787

5. R.B. Shivakumar バンガロール
ゴミ捨て場に丸々と捨てられたプラーオ(スパイシーな炊き込みご飯)を見て怒りを覚え、業を煮やした社会活動家が設立した機関。結婚式場、パーティー会場、ホテルほか、大量の場合は家庭からも食べ残しの料理を回収している。ただし「おいしい」ことが条件で、設立者のシヴァクマール(Shivakumar)氏が味見をして承認したものだけが回収されるとのこと。このため菜食(ベジタリアン)料理に限る。
電話:099-0056-8514

6. Annakshetra ジャイプール
レストラン、ケータリング、個人宅から食べ残しを回収する。いったん冷蔵庫に保管し、消費可能かどうかを専門家が判断してから必要な人々に提供される。
電話:090-0129-5293または014-1322-1267

7. Shelter Don Bosco ムンバイ
1987年からストリート・チルドレンの支援に取り組む、伝統あるNGO団体。食べ残しの料理は事前連絡を条件に、午後8時まで回収している。
電話:022-2415-0562

8. Arham Anna Daan ムンバイ
結婚式場、パーティー会場、寺院などから食べ残しを回収、スラム街や建設現場に届けている。
電話:098-2187-5656または098-6762-2002

9. Wrap It. Don’t Waste Food. コインバトールおよびチェンナイ
「心をひとつにして、インドを変革しよう(Reunite to Redefine India)」をスローガンにキャンペーンを展開するNGO団体で、レストランや家庭から食べ残しを回収している。現在はコインバトールとチェンナイで展開、50名のボランティアが活動している。回収時間は午後4時から午後10時までで、調理してから6時間以内の料理のみを回収対象とする。回収時にはボランティアが味見して鮮度を確かめる。
電話:099-5206-3561、099-4055-8802、099-4031-8578、096-0013-3657

10. Santhimandiram ティルヴァナンタープラム
孤児や身寄りのない人々のための施設を運営する団体。ホテルや結婚式場から食べ残しを回収している。
電話:098-9552-7372、098-9552-5097

このほかにも、食べ残しを回収してくれる機関が一覧されたディレクトリを見つけた。

このように、ざっと10団体がリストアップされていたが、食べ残しの引き受け先はどのように選定しているのかなど、興味は尽きない。
例えば、回収した食べ残しを瞬時にフリーズドライし、鮮度を長く保てるような、日本がいかにも得意そうな技術を、こうした団体のために開発し、導入できたら、恩恵を受けられる人々の裾野が大きく広がるのではないだろうか。


「おいしくなければノン!」と言っている、
バンガロールのシヴァクマールおじさま
(面識はありません)の写真を貼り付けてみました。
※正義の味方のひとりとして、尊敬の気持ちを込めて。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



Share it with


User Comments