チェンナイ近郊で40年以上、「5ルピーの医師」

 

Posted on 01 Nov 2017 22:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

医科大学の同窓生らがみな海外に移住したり、大手民間病院に就職したりしていい暮らしをしているところに、最低限の報酬で、必要な人たちに向かい続けることを使命としている医師がいます。



※リスボンの街並み。空き家が多い。2016年11月。
 

チェンナイ北部ヴィヤサルパディ(Vyasarpadi)に住む67歳の医師、ティルヴェンガダム・ヴィーララガーヴァン(Thiruvengadam Veeraraghavan)さんは、医師の倫理綱領の宣誓として知られるヒッポクラテスの宣誓に忠実に従い過去40年以上、最も経済的に恵まれない層の患者たちを、わずか5ルピーの治療費で診察し続けている。
「The Times of India」電子版が伝えた。

‘Two rupee doctor’ serves Chennai’s underprivileged - The Times of India



 

ヴィーララガーヴァン医師は1973年からたったひとりで、貧しい人たちのための奉仕をしている。
名目上の診察代として5ルピー(かつては2ルピー)しか受け取らないため、「5ルピーの医師」とも呼ばれている。

2015年に発生したチェンナイ大水害の際には、生まれ育った自宅や何もかもを流されるという災難に遭遇したが、水が引いてみると診療所だけは無事だったため、あくまで静かに診察を続けている。

当初は2ルピーだった診察代を5ルピーに上げたのは、他ならぬ患者たちからの強い勧めがあったからだという。
ただし、診察費を支払えない患者については、野菜などの物々交換や、時には手ぶらでも診察している。

この「非常識」な診察費に対し、近隣の医師から「せめて100ルピーに」という圧力がかかったこともあったが、かたくなに5ルピーを守り通してきた。

なぜ、ほとんど無料で診察を続けているのかという問いに対し、ヴィーララガーヴァン医師は「医学生だったころの政策により、一切の費用も支払うことなく勉学に取り組むことができた。その恩返しとして、患者からは診察費を取らないことを決めた」と説明する。

マドラス医科大学ではハンセン病治療の研修も受けている。
ほとんどの医師が医療機器や薬品等、資材の不備を理由に診察を躊躇する患者でも、進んで傷の手当てをはじめ治療に取り組んでいるという。

診療所の診察時間は毎日午後8時から10時まで。
それ以降は深夜まで、別の診療所に赴いて患者たちを診察している。

ヴィーララガーヴァン医師の哲学を、数年前に定年退職するまで鉄道職員を勤め上げた妻も、同じく医学の道を志す娘も支えている。
夢は、長年診察に取り組んできたヴィヤサルパディの地に、費用を気にせず通える病院を建てることだという。

民間病院で産業衛生担当アソシエートフェロー(AFIH)として、医師の採用に関わる業務が、唯一の収入源となっている。





      



About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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