中村哲医師のことを初めて知ったのは、福岡で高校生をしていた頃だった。
パキスタンというよく知らない国の、ペシャワールという、まったく聞いたこともない土地で、医療サービスが行き届かない村々に住む人々のために診療所を建てたり、医療活動をしている先輩がいる。
在学中にペシャワール会への入会案内を、何度か配られた記憶がある。
そのころ、中村哲医師は西日本文化賞や福岡県文化賞を受賞されていたので、もしかしたら講演のために来校されていたかもしれない。
そんなこともよく憶えていないくらい、今も昔も変わらず、知的探求心というものに乏しい能天気な間抜けのわたしは、中村哲医師についてはつい最近まで、「偉人」という程度しか知識を持たなかった。
インドに移住してからは、中村哲医師のご活動が新聞やウェブメディア等で取り上げられるたびに、「あの中村哲医師と、少し地理的に近いところに今いるんだな」という感慨に一瞬ふけっても、すぐに忘れてしまった。
ところが最近になり、インターネット上を巡回している時に、中村哲医師の不屈の取り組みと、砂漠を緑に変える、奇跡とも言える成果を紹介する記事をたびたび目にしていた。
その時に閲覧した記事の内容はもちろんのこと、わたしは添えてあった、中村哲医師のお顔写真に釘付けになった。
6年前に亡くなった父に、とてもよく似た顔立ちをしていらっしゃるように感じられたからだ。
お生まれになった年も1946年と、父と2年しか違わず、心が惹きつけられた。
そんな折、日本へ一時帰国していた折に、たまたまNHKが以下のドキュメンタリー番組を放送していた。
この番組を視聴した後、しばらく放心状態となった。
神様でも権力者でも、億万長者でもない、ひとりの、たまたま我が父にそっくりな個人が、縁もゆかりもない土地の人たちのために飛び込み、命をかけている。
こんなことが、できるのか。
同時に、ひとりの個人に、それができるのなら、もっと力があるはずの国家や行政には、なぜそれができないのかという単純な疑問も湧いてきた。
そう、すべては「意思」次第なのだ。
こんなところでシャレでもないが、人の意思は石をも動かす。
観終わった後に、並々ならぬメッセージを受け取ったような気持ちになり、涙があふれていた。
ひとりの人間ができることには限界がないということを、偉大な形で全世界に示している中村哲医師。
20年も遅くなってしまったが、わたしもようやく今年からペシャワール会の維持会員に加わり、ご活動について継続的に学ばせていただくことにした。
年間たった3,000円から一般会員に、10,000円から維持会員になることができる。
ペシャワール会ホームページ
「中村医師からの報告」
中村哲医師の略歴やご著作等 - 全国日本学士会