「遠いデリーへ」 - デリー探訪記 序章

 

Posted on 25 Aug 2015 11:48 in トラベルASKSiddhi by Yoko Deshmukh

दिल्ली दूर है(Dilli Dur Hain、「デリーは遠い」、転じて大事を成すには時間がかかることのたとえ)― 2015年8月下旬、インド在住12年目にして、初めて首都の土を踏んだ。



※補足情報(2015年8月26日)
いま、在日本インド大使館のホームページを見ていたら、日本で切り替え申請をする場合は、手数料がかかることがわかりました。
日本で手続きをなさる場合は、以下を参照のうえ、必要に応じて窓口へ問い合わせたほうがよさそうです。
参照:
Welcome to Embassy of India, Tokyo (Japan)

今回のデリー行きは、インド永住ビザにあたる「OCI(Overseas Citizen of India)Card」の発行にともない、それを受け取りに赴くことが主な目的だった。

OCIカードとは、言い換えると「インド生涯ビザ」、いわゆる永住権のことである。

これまで、わたしたちのようにインド人と結婚した外国籍保持者、およびインド人と外国籍保持者の子で、外国籍を選んだ人に対しては、(看板に偽りはあるものの)15年間有効の長期滞在特別ビザ「PIO(Person of Indian Origin)Card」が発行されていた。
ところが昨年9月、ナレンドラ・モディ首相が訪米演説の中で、PIOカード保持者についても、生涯有効ビザであるOCIカード保持者と(これも「インド国籍保持者」としている点で看板に偽りありだが)同等の扱いとする、と宣言、特段の事情がなければ、永久にビザ更新をする必要がなくなると謳った。

注:ただしPIOカードも、これまで15年という長いスパンごとの更新が求められた点を除いては、就労の自由はじめインドにおけるほぼ一切の権利が与えられていたし、また農業用地の取得禁止や選挙権がないという一部制約がある点も含めて、OCIカードとまったく同じ資格だった。

ともかく、これを受けてPIOカード保持者には、OCIカードへの切り替えが「推奨」されることになったが、PIOカードが発行されなくなる、つまり今後は存在しなくなることを考えると、切り替え取得しておいたほうが無難である。
PIOカードからOCIカードへの切り替えは、ムンバイFRROによれば2015年9月30日までの申請受理分であれば、無料で実施してもらえるとのことだが、これ以降は、手続きになんらかの費用や料金が課せられる可能性がある。

※ただし、デリーFRROオフィス内のOCI担当課に掲げられたチラシには、2016年1月30日まで切り替え申請受理と書いてあった。正確なデッドラインについては、各自で申請先に確認したほうがよい。


パスポートページに貼付された「生涯ビザ」

必要書類は、記入済みオンライン申請書(記入先への入口はこちら [Overseas Citizen of India (OCI) Cardholder下の「Online Registration」をクリックし、「OCI-Registration」→「OCI Registration (In Lieu of Valid PIO Card)])のプリントアウト、婚姻証明書または出生証明書・パスポート・PIOカードのコピー、必要な場合は夫、妻または親の死亡届のコピー、住所を証明する書類(本人名および住所宛ての電気代やガス代、携帯電話料金等の払込書があればよいが、なくてもPIOカードに正式に現住所が印字されていれば、そのコピーでも可だと思う)、ビザサイズの写真1枚。
状況によっては、さらに書類を要求される場合もある。
書類とコピーには、提出する前に、すべてに自署を記載したほうがよい。

※なお、上記ステップは既にPIOカードを持っている人がOCIカードへ切り替え申請する事例について説明しているものであり、今回新規にOCIカードを取得する人は、加えて申請費用(Demand Draft)や、警察署管轄の外国人登録事務所(FRO)が発行した登録書などの書類も提出する必要がある。詳細については、先ほどのリンクから該当する箇所を参照のこと。

申請書類の提出場所は、わたしが申請した5月上旬時点では、PIOカードの発行元と同じところに申請すべし、との指示があったため、2004年当時プネ在住者のPIOカード発行を担当していたデリーFRROに申請することになったのだが、その後、方策の転換があったのか、最寄りのインドビザ関係当局、たとえばプネ在住者であればムンバイFRRO、日本やその他国の在住者では所轄の大使館または総領事館にて申請できるようになっている。

書類の提出に際しては、インド国内からは遠方の場合、窓口に赴かなくとも、Indian PostのSPEED POSTを利用して送付してもよい。

無事にオンラインでの記入と必要書類の送付を終えたら、OCIの発行までおよそ2カ月ほどかかるので、定期的にオンラインでステータスをチェック、たまに電話をかけてみたりするとよい。
わたしの場合は、夫のフォローアップのおかげもあり、申請から2カ月未満で、スムーズに発行された。

さて、晴れて発行済みとの連絡を受けたら、インド国内であれば本人か委任を受けた家族、または所定の手続きを経れば代行業者がパスポートと旧PIOを携えて申請先の窓口に赴き、OCIの配布と、パスポートへのビザシールの貼付を受けることになる。
わたしも当初は、なるべくであればわざわざデリーに行かなくても済むよう、代行業者の利用を考えていた。

のんびりできるリゾート地というわけではないし、そればかりか観光客をだまそうとする奴らが手ぐすね引いて待ち構えているような、「戦いの場」というイメージのある喧騒のデリーには、プネの田舎者であるわたしにとって怯えもあり、しかも今年に入ってから臨時出費が続いていたこともあって、旅行資金がかかってしまうことに対する心もとなさがあった。

だが、デリー周辺には素晴らしい歴史的遺産が数多く存在すること、いつも国営放送ドゥールダルシャン(Doordarshan)で映し出される、国の中枢を担う建造物群の迫力を一生に一度は間近で見てみたいということ、そして広大なインド中、そして世界中から人々を集め、訪れた人の記憶に鮮烈に残る、わが第二のふるさとの首都とは、どんな様子なのかを体感したいということ、そうした思いや、こういう機会でもなければ、なかなか足を運ぶこともないだろうから、という夫の説得もあって、観光も兼ねての訪問を決めたのだった。


今回、役目を終えたPIO Card。OCI Cardと引き換えに返却する。

余談だが、PIO/OCIカードについては最近、悶々と思うところがある。
ご存知の方も多いだろうが、近年インド政府は、主に中国などからの安い労働者が過度に流入することにより、国民の職が奪われるような危機を回避するためとして、外国人を現地雇用する場合、1名あたり年額2万5000ドルを最低報酬として支払うことを、就労ビザ発行の条件として義務付けている。

当然、そうした義務付けをグレーゾーンで切り抜け、安い報酬で外国人を現地採用している企業も少なくないが、そうした企業が狙いをつけるのが、報酬の下限が特に設定されていない、われわれPIO(現OCI)保持者なのである。
つまりPIO/OCIカードとは、「安い外国人労働者」の看板のような役割を果たしているようなところがある。

わたしは現在、フリーランスであるため、企業の提示する年間報酬額に右往左往させられるような境遇から解放されているものの、インドで仕事を求める外国人にとって、条件面で一般外国人よりも合法な形で競争力をつけられるという点ではPIO/OCIカードのメリットもあるだろうが、能力が変わらないとした場合、一般の外国籍の現地採用社員との間に、大きな待遇の差がつけられてしまうのでは、と考えると、やるせない気分になってしまう。

というのも、これまでの経験から、インド企業は外国人社員の能力を正当に評価する仕組みに欠けているところが多いように感じられるのだ。

本来、グローバル化を目指す企業にとって、短期間で帰国してしまう一般外国人よりも、現地の文化や習慣に溶け込み、長期間にわたって母国とインドとの橋渡し役として、成果を生み出し続ける可能性のある人材は、貴重な戦力になると思うのだが、「安い買い物」しか考えていない企業ばかりが目につくのは、残念なことだ。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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