251ルピー・フォン「Freedom 251」の雲行きは:ターゲット層や販路の動向に注目
Posted on 20 Feb 2016 23:00 in インドビジネス by Yoko Deshmukh
誰もが「1台251ルピーのスマートフォンなんて常軌を逸していて、無理だ」と口を揃えます。インド版「スティーブ・ジョブズ」となるか。走り出した「Freedom 251」、これからにかかっています。
*Image of Freedom 251 from India Today
今週は1台251ルピーという、文句なしに世界最安のスマートフォン「Freedom 251」(いつの間にか専用ページができているが、予約殺到のためか現在は「Booking Closed」と表示)が発表され、インド国内外の関心を集める大きな話題となっている。
中にはさっそく「10台は欲しい」などと言っている人もおり、話題性も相まって「爆売れ」する兆しはあるが、発表したのがスタートアップ企業ということもあり、果たして生産・販売体制は万全に整っているのか気になるところだ。
実際、インディアン・エクスプレス電子版でもオンラインでの購入を実際に試み、「無限にカートに追加できるようになっている(現在は1人1台まで)」とか、「購入ステップに進むとブラックスクリーンが現れて決済できない」とか苦情を書き立てており、期待の大きさゆえに、同社がどういった対応を用意しているのかも、引き続き注目されている。
出てきた端末があまりにも粗末で使い物にならないため、大量の電子廃棄物が発生することになったり、そもそも、これまでスマートフォンを持たなかった人たちに届かなければ意味がないのに、都会の金持ち(ミドルクラスも含む)が買い占めてしまって常に在庫が足りない、なんていうことになったら意味がない。
オンラインで購入できるようになっている点からして、「本当にモディ首相の理念に共鳴した製品なのか」、「農村やスラムの人たちが、サイトにアクセスして購入するとは思えない」などの、批判の声が高まっている。
たとえば、社長自らが自社のロゴがプリントされたTシャツを着て、農村やスラムを回って「Freedom 251」の営業・販売に勤しんでいる姿を見せれば、それこそ「Made In India」のセンセーションを巻き起こせよう。
このようなことを考えていると、2008年に10万ルピー(発売当時)という「世界最安」乗用車として発売され、やはり世界中で話題となったタタ(TATA)の「ナノ(Nano)」が登場した時のことが思い出される。
あの時も、注文が殺到して生産体制がまったく追いつかず、納車まで1年以上も待たなければならない人も多くいた。
そんな中、本日付の「インディア・トゥデイ電子版(India Today)」には、「Freedom 251」の生みの親、開発会社リンギング・ベルズ(Ringing Bells)社のモヒット・ゴエル(Mohit Goel)社長への短めのインタビュー記事が掲載されていたので、製品に込めた想いを理解する一端として、少し紹介したい。
ゴエルさんはウッタル・プラデーシュ州のガリー・プクタ(Garhi Pukhta)という、インド人でも知らない人の多い人口3万5,000人あまりの小さな町で生まれた。
工学を専攻するためデリー郊外ノイダ(Noida)のアミティ大学(Amity University)に進学するまでは、父の営む小さな食料品店の店番などをしながら育ったという。
今でも食料品店の店先に座る父は、息子の成功を喜んでいる。
「『スマートフォン』ちゅうのが何だか知らんが、前に息子が帰省してきた時、自分の会社を始めたいと言うてな、少し金を貸してやったんじゃ。あの時は、大丈夫なんじゃろうかという心配な気持ちがないでもなかったが、何やら、あっちゅう間に大人物になったものじゃなぁ」父のラジェッシュ(Rajesh)さんは一躍時の人となった息子の成長に目を細める。
ゴエルさんの両親は、先日デリーで開催された「Freedom 251」の発表イベントにも招かれたという。
「すべての人の手にフル機能のスマートフォンを」をメッセージとする「Freedom 251」、この記事を読めば、自らの両親のような人々に真っ先に使ってもらいたくて作ったに違いないことが、よく分かる。
初志が貫徹されるか否かは、今後の動向にかかっていると、インディア・トゥデイでも締めくくっている。

「Freedom 251」背面。
インド国旗のデザインはデフォルトなのだろうか。
*Photo from India Today
About the author
|
|
Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
|
User Comments