「難しいインド」に果敢に挑戦し、勝利する外国人女性たち
Posted on 15 Feb 2016 23:00 in インドビジネス by Yoko Deshmukh
プネにも数多くの外国人ビジネスウーマンがおり、環境や社会を言い訳にせず、大健闘しています。
*The product of "Monsoon and Beyond," the photo from Forbes.com, where the article is referenced.
先月、ASKSiddhi(アスクスィッディ)記事「インド企業における女性リーダーシップの活用度、日本と状況は酷似」でもご紹介の通り、昨年後半から、プネで仕事をする外国人女性たちとお目にかかる機会が増え、中には事業を立ち上げ、奮闘されている方もけっこういらっしゃる。
去る週末は、プネに工房を置き、ご自身の服飾・宝飾ブランド「Parisa's Design」を立ち上げ活動をしているイラン人女性、パリサ・ウッド(Parisa A. Wood)さんが、わが家すぐ近くの、これまた本場イタリア人が経営しているイタリアン・レストラン、「Dezio」を会場に展示即売会を開催していた。
わたしは残念ながら週末恒例の仕事漬けとなってしまい、赴くことができなかったものの、インド人富裕層や外国人駐在員、ビジネスピープルに広い人脈を持つパリサさんの人望によって、大いに賑わったイベントだったと、ご本人に伺った。
同じ「働く外国人女性」でも、自宅にこもって、主に日本や海外から受注した翻訳業務に専念しているわたしとは比べるべくもないのだが、このような細腕一本で真正面からインドに挑む方々を見ていると、とても励まされる気持ちがする。
そこで本日は、ビジネス誌「Forbes」ウェブ版に、インドでビジネスという果敢な挑戦をしているオーストリア人女性へのインタビュー記事(Ambika Behal氏著)が紹介されていたので、これを抄訳してご紹介したい。
ヴェラ・フリッチュ(Vera Fritsch)さんは、多言語国家であるのみならず、官僚主義がはびこり「世界で最も外国人がビジネスをしにくい国」として悪名高く、しかも依然として女性の地位が多くの場面で決して男性とは対等と言えないインドで、自身が手掛け、倫理的な方法で商品の製造と販売を行うデザイナーズ・ブランド「Vera Fritsch of Monsoon and Beyond」を経営している。
フランス、イギリス、イタリア、そしてスウェーデンという、いわゆる西側の先進国で暮らした経験があり、経済学の専門家でもあるフリッチュさんは2007年、ある外交使節団への同行をきっかけに人生で初めて、インドを訪れた。
その出会いがフリッチュさんの中に眠っていた「デザイナー魂」に火をつけることになり、その情熱を思い切って仕事にしてしまった。
2013年、フリッチュさんは製造から販売まで、一貫して倫理的な方法を採用するブランド、「Monsoon and Beyond」を立ち上げ、現在インド、香港、シンガポールに店舗を構えるグローバル実業家となった。
さて、フリッチュさんはなぜ、よりによってインドの地をビジネスの拠点に選んだのだろうか。
「インドがなければ私のブランドは存在し得ないから」ときっぱり語るフリッチュさん、例えばジョードプルの藍色の家々、オールド・デリーにある中世の霊廟の色あせた壁、ムンバイのマリーン・ドライブ(Marine Drive)に沈む夕日など、インドでの日常生活そのものが商品のインスピレーションになっているのだという。
さらに、ブランド「Monsoon and Beyond」にとって、インドならではの高品質な布と並外れた職人の腕、そして「アーリ(Aari)」刺繍やブロックプリントなど、古くから受け継がれてきた工芸技術が欠かせない。
こうした伝統の柄を、現代風で前衛的なデザインとして提案することが、ブランドのキーとなっている。
しかし、インドならではの課題は当然ある。
フリッチュさんによれば、インドで外国人が起業するには、会社登記の際にまず官僚主義的なハードルが立ちはだかるという。
例えばフリッチュさんの場合、事業用の銀行口座開設に、およそ2ヶ月もかかったという。
さらに、自分が満足のいく水準の、ハイエンドな商品を製作してくれる製造パートナー探しにはかなりの困難を要し、会社設立から1年はゆうに費やした。
現在はデリー郊外の工房と提携して15名の職人を雇用、自社オリジナル製品をひとつひとつ手作業で製造してもらい、待遇を含めた工程に倫理的な方法を採用していることを強調した。
最後に、外国人起業家を奨励するためのインド政府への要望として、事業収益の国外への持ち出し制限の緩和、輸入関税の緩和、国による付加価値税(VAT)の統一(現在はCST [Central Sales Tax]とVATの二重課税)、そしてインド企業、特に伝統芸術、文化、遺産を守り、倫理的な方法で事業を行う企業が、海外進出する際の補助金や助成金などの財政的インセンティブを挙げた。
今後もインドで精力的に製品ポートフォリオを増やし、また新市場を開拓したいと語っている。
冒頭で挙げたパリサさんの経歴も、少しフリッチュさんに似ていて興味深いので、ご紹介したい。
イラン生まれのパリサさんは、もとは生物学で学士を取り、さらに健康科学と哲学、社会学、そして経済学の修士号を持つ、驚くべきインテリ。
ところが、持って生まれた絵画的センスとインドの布や宝飾品に対する造詣が高じ、デザインの世界に導かれるようにして、プネにある米系企業でジュエリーデザイナーとして仕事をする傍ら、4年前に自分の会社を始めた。
パリサさんが生み出す宝飾品や服飾のデザインは、自身の審美眼を信じた高い芸術性にこだわるのみならず、「女性の力」を引き出すことを主眼に置いているという。
もちろん、インドでのビジネスは困難の連続だったというが、2011年にジュエリーデザイナーとして現在も在籍する米系企業経営者である現在の夫(カナダ人)と知り合い、またイランの家族からの協力も得ながら、小さな展示会から少しずつ、ブランドの認知度を広げていった。
パリサさんは今、イラン人として世界的に名の知られる服飾デザイナーになることを目指して、日夜、女性たちひとりひとりが「自分以外の何者になろうとしなくても、生来の魅力に気付き、それを高められる服やアクセサリー」をコンセプトにした作品作りを追求している。
わたしは、プネに住み働くいち外国人女性の端くれとして、このように真剣勝負をしているパリサさんの存在が頼もしく、どれほど勇気づけられるか分からない。
ちなみに、パリサさんのご経歴は、Facebook Messengerを使って夜更けに突撃取材したにも関わらず、快くお答えくださったことに、この場を借りて改めて感謝したい。
※2月16日、パリサさんのプロフィールと写真を追記。
フリッチュさん(元記事Forbes.comより)
パリサ・ウッドさん(Parisa Designより)
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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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