2016年3月ゴア滞在記完結編:「沈まぬ太陽」を追いかけて

 

Posted on 07 Mar 2016 23:00 in トラベルASKSiddhi by Yoko Deshmukh

いま持っているもの、恵まれているものを、心から味わい尽くすように日々を紡いでいくことは、最終的には何か大きな困難が降りかかってきたときの地盤になるような気がしています。



全作を古本で購入したものをスキャンして、キンドルに入れておいた山崎豊子さん作「沈まぬ太陽」をゴアに持ち込み、読んでいる。

この作品を通じて、わたしは初めて、日航機が1972年にもデリーのパーラム国際空港への着陸直前に墜落し、多数の死傷者を出した事故、また同年にムンバイで、ジュフー空港の滑走路(当時およそ1500メートル)をボンベイ国際空港(同およそ3300メートル)の滑走路と取り違える誤認着陸事故を起こしていたことを知った。

現在、凄惨な日航ジャンボ機墜落事故(作中では国民航空ジャンボ機墜落事故)の章を読んでいるところだ。
山崎豊子さん作品に共通する、強靭な意思と精神力を持った主人公を軸に、事実に基づく描写を追っていくと、改めて「働くとは何か、生きるとは何か」を深く考えさせられる。

働くということは、常に相応する(昇進や栄誉を含めた)報酬や承認を得られるとは限らない。
作中で主人公は徹底的に、これら「働くことで人が自然に期待する基本的な代価」から実に不当な形で排除されている。
また自社が引き起こした事故後には、遺族対応係として会社を代表し、正面から怒りを受け止める役割を引き受けることになる。

そんな局面でも、その「仕事」に真心と誠意を尽くすことができるのか。
「自分の地位のため」、「誰かが褒めてくれるから」といった価値観が入らない状況での「働きぶり」こそが、その人の本質を浮き彫りにする。
自分の仕事ぶりはどうだろうかと振り返りつつ読み進めている。

そして航空機事故で愛する家族を突然、亡くした人々にとって、生きるということは、世間体を整えることでも、体裁を取り繕うことでもなく、あるがままの日常を慈しむことに他ならない。
生きるということは、いま与えられた一瞬一瞬を、味わい、噛み締め、愛おしむことなのだ。
それぞれの遺族たちの、家族との日々や思いに関する細かな描写を通じて、そのメッセージが繰り返し胸に迫って来る。

そういえば、今回のゴア旅行に同行させていただいた、タイのチェンマイ在住フランス人の方が、わたしの年齢の時に人生の大転換ともいうべき選択をし、その結果として今があることについて、「ではあなたは、これからのことはどう考えているのか」と訊ねたら、「そんなことは分からないし、考えてもいない。今あるものに全力を尽くしていれば、何かが自分を待っているさ」と、さらりと言われて、「フム」と納得したような気持になった。

ちょっとでも不快なことがあったり、疲れたりするだけで、機嫌を悪くし、不平や不満を抱いてしまうわたし。
いっそ、そんな日常も受け止めて、味わい、噛み締め、愛おしもう。
くじけそうになったとき、元気がなくなったときには、「インドの異界、ゴア」に、いつでも行けるんだということを思い出そう。

※それぞれの写真をクリックすると、大きなサイズで表示できます。


朝日の中、浜辺でスーリヤ・ナマスカールをする西洋人の若者たち。
 


すっげ~、きみたち、影絵になってるよ!
 


こちらは浜辺に沈む夕日。
 


いまにもひとりでに漕ぎ出しそうな舟。
どこへゆくのかな。

***

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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