弱っている個人の行動に対する警察の過剰な取り締まりの是非、最高裁で審議

 

Posted on 17 Apr 2020 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

世界最大の民主主義国家インドが、非常時の今こそ冷静な英断を下して欲しいです。そしてこんな日々も笑い話にできる時が、1日も早く来ることを願っています。



16日付けのデータで新たに800人以上が確認されたことにより、国内の感染者数は1万人を超えた。
うちマハーラーシュトラは州内だけで総数が3,000人を超えており、特に影響の大きなムンバイーでは既に集中治療室の数が足りなくなっていると報じられている。
医療現場の最前線で働く人々にとっては戦場の様相を呈しつつある。

インド全土封鎖と外出禁止令の発令から、まもなく1か月が経過しようとしており、経済はもちろん、人々の肉体的・精神的な衛生面への影響も無視できない。
新聞報道を見ていると、新型コロナウイルスによる死者のほかにも、陽性と診断された人が差別への恐怖や故郷に帰れなくなることへの絶望により自殺との報道も日常的に目にする。
こうした人々もコロナ関連の犠牲者としてカウントすべきだろう。

国土の大部分が酷暑期入りする中、狭くエアコンもない空間に、ざらに3世帯が暮らすなど、劣悪な環境下での在宅を余儀なくされている人々の疲労や不満も噴出し始め、そうした人々に対し警察による行き過ぎた強権の発動によるトラブルも各地で発生、暴動に発展し兼ねない衝突事件や痛ましい傷害事件も起きている。
全体的な識字率が低く、正確な情報を得ることができないままデマに踊らされやすい一般大衆に対峙しなければならない警官たちは、常に命がけでの対応を迫られている。

一方で、朝の散歩やジョギングをしていた人々が取り締まりに遭遇し、5~6人と警察官2名が1台のジープに押し込められ、警察署に連行されている。
路上での厳重注意で十分なところ、不特定多数の人、および必ずしも十分な教養を備えているとは限らない警察官と密集して車に乗ることで、感染が広がっているのではないか。

いくら外出禁止令が出ているからと言って、感染を防ぐことのできる十分な距離を取れる早朝に、ささやかな散歩やランニングをしている一般人を犯罪者扱いしていいのか。
しかもその人たちを、感染危険地区を含む様々な場所に出動して自身が感染しているかもしれない、衛生観念が乏しいかもしれない警官2名の同乗するピックアップに積んで署に連行するという、不注意な感染拡大行動が取られていいのか。
このように、現場の警察官たちが衛生意識に欠けたまま、与えられた「公権力」に酔った人権蹂躙とも言える強硬措置を、プネー全域で実施している。

Over 120 ‘morning walkers’ get yoga lessons

感染者が急増しているプネーやマハーラーシュトラ州の危機的な状況は十分に理解しているが、人ごみのない場所を歩いているだけの国民を一括りに犯罪者扱いし、集めることで感染の危険にさらすことが「対策」だとみなされている現状を、成すがままにしておくべきではない。

インド全土封鎖とともに発令されたインド刑法144条(非常時の集会禁止)と、同188条(公務員の命令への不服従)、そして盲目的な「モーディー・ジー」信者と化した、命令に従うことしかできない警官たちによる横暴に発展しつつあり強い懸念を抱いている。

モーディー首相をはじめインド政府は「コロナとの戦争」と表現しているが、「戦時下」に自国民を「敵」であるウイルスに差し出すような、無知で無能で無策な、あまりにも幼稚な措置がまかり通ることは、インドの未来のためにもよくない。

幸いにも、同様の強い懸念を抱いている元警察長官が現在、最高裁判所に訴えている。

COVID-19 | Plea in SC seeks quashing of FIRs lodged under Section 188 of IPC during lockdown

ウッタル・プラデーシュ州の元警察長官、ヴィクラム・スィン(Vikram Singh)氏が、新型コロナウイルス感染拡大防止を目的とした外出禁止令に従わなかったことを理由に、一般市民に対して警察官が行なっている過剰な取り締まり行為に対し、最高裁で異議を訴えている。

スィン氏は自身が会長を務めるシンクタンク、「Centre for Accountability and Systemic Change」が収集したデータとして、ロックダウン後の3月23日から4月13日までの間に前述の刑法188条に違反したとして、デリーだけで848件、ウッタル・プラデーシュ州でも4万8,503人を対象とした1万5,378件もの摘発があったとした上で、「こうした摘発は同条の違反には当たらない」と主張している。

スィン氏は、「特殊な状況下における不安や苦痛、情報の欠如に苛まれた、脆弱な個人に対する、警察によるいかなる懲罰も、ロックダウン後に禍根を残す恐れがあり、憲法で守られた民主主義を害するものだ」と指摘、コロナ禍のインド全土で警察官が明らかに越権とみなされる行為に手を染めていると警告している。

「コロナウイルスはパンデミックとなり、世界中の人々に苦しみをもたらしている。こうした状況は人道的に対処すべきであり、でき得る限り犯罪性を付加することを避けることが最善だ」とまとめた。

この話題は、昨今の出口の見えないコロナ禍と果てしなく感じられるロックダウン下のインドで、不安な気持ちを抱えていたわたしには、民主主義国インドに信頼を寄せられる余地となっている。

なお、現状に何ら役立つ情報をご提供できていない「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」なので、せめて「在ムンバイ日本国総領事館」より日々発信されている州内の状況や州政府による措置に関する最新情報を、今後はこちらにも転載させていただきたい。

=== 以下、同掲題メールの転載 ===
※4月14日付けのメール、件名「インドにおける新型コロナウイルスに関する注意喚起(ロックダウン措置の新たなガイドラインほか):在インド日本国大使館」

●インド政府によると,4月15日現在のインド国内感染者の合計は11,439例(死亡377例)となっています。
●15日,インド政府は,ロックダウン措置の新たなガイドラインを発表しました。引き続き,国内・国際航空路線・鉄道による旅客の移動,公共バス・メトロ・タクシー・リキシャ,州境を越える個人の移動,映画館・ショッピングモール等の原則的な禁止・封鎖等が5月3日まで継続され,これら措置が厳格に適用されます。同時に,4月20日以降,社会的距離の確保等,一定の条件の下で許可される活動も発表されています。
●各州政府は感染ホットスポット周辺を封じ込めゾーン(containment zone)及びバッファーゾーン(buffer zone)に指定し,完全封鎖措置(家・敷地から外出することを禁止)をとっています。今後もホットスポットは増える可能性があるところ,邦人の皆様におかれては,州政府発表や報道等でご確認の上,行動にご注意下さい。

在留邦人及び短期渡航者の皆様へ

本15日,在インド大使館が在留邦人あてに以下の領事メールを発出したので,お知らせします。

1 インド政府によると,4月15日現在のインド国内感染者の合計は11,439例(死亡377例)となっています。州ごとの内訳等は以下をご覧ください。
https://www.mohfw.gov.in/node/4904/

2 15日,インド政府は,ロックダウン措置の新たなガイドラインを発表しました。引き続き,国内・国際航空路線・鉄道による旅客の移動,公共バス・メトロ・タクシー・リキシャ,医療等の場合を除く州境を越える個人の移動,映画館・ショッピングモール等の原則的な禁止・封鎖等が5月3日まで継続され,これら措置が厳格に適用されます。同時に,4月20日以降,社会的距離の確保等,一定の条件の下で許可される活動も発表されています。新たなガイドラインの下での制限措置及び4月20日以降許可される活動については,下記インド内務省の発表をご参照ください。
http://164.100.117.97/WriteReadData/userfiles/15.04.2020%20Revised%20Consolidated%20Guidelines.pdf

3 各州政府は感染ホットスポット周辺を封じ込めゾーン(containment zone)及びバッファーゾーン(buffer zone)に指定し,完全封鎖措置(家・敷地から外出することを禁止)をとっています。今後もホットスポットは増える可能性があるところ,邦人の皆様におかれては,州政府発表や報道等でご確認の上,行動にご注意下さい。
封鎖措置の対象となる地域においては,市民は外出せず,生活必需品についても店頭ではなくデリバリーで調達することが求められています。

4 在留邦人,インドご滞在中の皆様におかれては,以下の点にご注意の上,最新情報の入手に努め,困ったことがあれば本メール末尾の問い合わせ先にEメールでご連絡ください。
(1)中央政府及び地方政府が感染予防のための措置を強化する方向にあり,制度が突然変更される可能性もありますので,十分注意して行動してください。
(2)在インド日本国大使館では在留邦人の皆様からの保健相談を受け付けるための窓口を設置しています。
jpemb-hokensoudan@nd.mofa.go.jp
ご利用に際しての詳細は,以前の領事メールをご覧ください。
(3)インド政府は,全国におけるロックダウン措置を実施しています。警察による取締りが強化されていますので,十分ご注意ください。なお,この措置を受け,領事業務を含め大使館の業務が今後限定的になる可能性があります。
(4)ご自身や周囲の人の感染予防のため以下の点にご注意下さい。
・アルコール系手指消毒薬または石鹸と流水による手洗いを頻繁に行う。目,鼻,口などに触れる前に手洗いをする。
・咳やくしゃみがあるときはマスクを着用して鼻と口を覆う。マスクがない場合は,咳やくしゃみのときに口と鼻をティッシュなどで覆い,手洗いを行う。

(各種情報が入手できるサイト)
インド政府広報局ホームページ
https://pib.gov.in/indexd.aspx
インド保健・家庭福祉省公式ツイッター
https://twitter.com/MoHFW_INDIA
インド入国管理局ホームページ
https://boi.gov.in/
在日インド大使館ホームページ
https://www.indembassy-tokyo.gov.in/jp/index_jp.html
外務省海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/
厚生労働省ホームページ:新型コロナウイルス感染症について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
首相官邸ホームページ:新型コロナウイルス感染症に備えて
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/coronavirus.html

このメールは,在留届にて届けられたメールアドレス及び旅レジに登録されたメールアドレスに自動的に配信されております。

【問い合わせ先】
在ムンバイ日本国総領事館・領事班
電話(91-22)2351-7101
メール ryoji@by.mofa.go.jp

=== 転載終わり ===

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※IMFチーフエコノミストのゴピーナート氏による、今後の世界経済成長率に対する新見解(The Great Lockdown)が発表された影響か。参照: The Great Lockdown_ Worst Economic Downturn Since the Great Depression – IMF Blog

 






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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