視覚障がいの男性、ゼロから起業してキャンドルで億万長者に

 

Posted on 22 Apr 2015 10:55 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

「不可能」とは、各個人によって定義が異なるものだと思えます。



先天的に網膜筋が弱く、23歳の時に一切の視力を失った男性が、不屈の精神力により人生を切り開き、億万長者となったストーリーを、オンライン誌「ユアストーリー(Your Story:yourstory.com)」が紹介した。
 
バヴェシュ・バーティア(Bhavesh Bhatia)さんは現在45歳。
幼い頃から貧困の中にあり、苦労尽くしだった中にあって、決して諦めることのなかった強さの背景には、亡き母の存在が大きくあるという。
 
「目が見えにくいことで学校でいじめに遭い、帰宅して翌日から学校へ行きたくないと訴えた私に、母は『いじめる子たちは、本当はおまえと友達になりたいんだよ。だけど、いじめることによってしか、注意を引く方法を知らないだけなんだ』と言いました。半信半疑で翌日から、いじめっ子に対してこれまで向けていた敵意を、友情に変えて接するようにしたところ、驚いたことに、すぐに仲良くなることができたんです。今でも彼らとの友情は続いています」バーティアさん。
 
その後、母親は早くにガンで他界したが、その時のバーティアさんは、それまでの介護のために職も失い、また医療費で貯金もまったくなく、読み書きもままならず、まさに壊滅的などん底状態だったという。
「生前の母は、私の視力のハンディを克服するために、大学院になっても学業の手引きをしてくれ、支えてくれました。母は『(視力を失った)おまえが世界を見ることができないのなら、世界がおまえを見出してくれるような人生を歩んでいきなさい』と常に言っていました。そこで母の亡き後は、これまで以上に懸命に働くことにしたのです」
 
子供のころから手を動かすことが好きだったバーティアさんは、キャンドルを使って小さな作品、例えばおもちゃや人形を作って売ることを思い立った。
1999年にムンバイの「National Association for the Blind(視覚障がい者協会)」で訓練を受け、自宅のあるマハーラシュトラ州マハバレシュワル(Mahabaleshwar)で、友人の助けを借りながら制作した作品の販売を始めたバーティアさん。
「当初の収入は本当に僅かで、頼りないものでしたが、少なくとも好きなことをしているという充実感はありました。
 
しかし、そんなある日、顧客としてキャンドルを買いに来た、ある女性との出会いによって、バーティアさんの人生は大きく変化することになる。
「彼女の姿形こそ見ることは叶わなかったが、その愛らしい笑い声や、穏やかな雰囲気に、まさに『一目惚れ』だったんです」
その女性、ニータさんとの運命的な出会い、そして貧しいバーティアさんとの結婚に対する、ニータさん周囲の猛反対を乗り越えて結婚を果たすと、2人は風光明媚なマハバレシュワルの丘の上に建つ小さな家で、新生活を始めた。
 
ニータさんは徹底した楽観主義者だった。
当初、調理器具すら購入するお金がなかった2人は、キャンドルを溶かすのに使った鍋を、料理にも使った。
やがて、バーティアさんの制作したキャンドルをバイクで行商していたニータさんは、より多くのキャンドルを積めるよう乗用車を購入する。
「妻は人生の光となった」バーティアさん。
 
それでも、売り歩いていたキャンドルを心無い人によって溝に捨てられたり、より質の高いキャンドル制作のスキルを乞うて様々な機関をあたっても嘲笑され、門前払いを受けたりなど、目が不自由であるということだけで不当な差別を受けることは、しばしばあったという。
「しかし妻のおかげで、喜びは2倍に、苦しみは半分になった」
 
そこでバーティアさんは、妻とショッピングモールなどに出かけ、高級キャンドルに手で触れ、質感などを体得していった。
やがて銀行からの融資を受けられるようになり、生産規模の拡大が可能になると、事業は大きな転機を迎えるようになる。
 
「世界中から注文が入るようになったのです。そこで200名の従業員を雇用し、本格的な生産体制を整えることにしました。もちろん全員が視覚障がい者です。今、振り返れば、どんなビジネスでも厳しい道のりは避けられないものであり、なぜ当初、私がチャンスを掴めなかったのかが理解できます。銀行を含めて、やはり誰もが、視覚障がい者に事業を任せられるのか、不安だったのだと思います。しかし時間はかかりますが、心を込めて一歩一歩、着実に物事を達成していくことができれば、信用を得ることも不可能ではありません。大切なのは、自分が本当にやりたいと思えることを見つけ、それを追求していくことだと思っています」
 
まさにゼロから事業を起こしたバーティアさん、現在は1日25トンのキャンドルを生産するまでになり、その工場からは、インド国内の主なショッピングモールに出荷されているほか、英国にも輸出されている。
 
バーティアさんは、特に少女の視覚障がい者に積極的な職業訓練を実施し、自立を支援している。
さらに2016年にブラジルで開催されるパラリンピックに挑戦する、若いアスリートたちの訓練にも協力している。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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