戦争捕虜になって三千里、50年の時を経て帰国を果たした元中国人民解放軍兵士

 

Posted on 12 Feb 2017 23:00 in インドの政治 by Yoko Deshmukh

境遇も経緯もまったく異なりますが、太平洋戦争後に終戦を知らずに山奥に隠れ、数十年後に発見された旧日本軍兵士たちのことを少し思い出す話題でした。



※ちなみにこの写真は香港国際空港です。
 

インドと中国は、あまり仲がよくないというようなことはよく言われているが、インドが敗戦した1962年の中印国境紛争直後から現在までの、ある中国人男性の、このような実体験もある。
NDTVが伝えているのをシッダールタが教えてくれて、印象深かった。

Chinese Soldier Who Strayed Into India Returns Home After 5 Decades - NDTV

またこちらの英BBCの記事には、動画やワンさんの写真もたくさんアップされている。

Chinese man trapped in India goes home after 50 years - BBC News

陝西省の西安からもっと奥にある、Xue Zhai Nan Cunという村出身のワン・チー(Wang Qi)さんは、停戦時にインド側で捕虜になった元中国人民解放軍の兵士。
1962年の中印国境紛争終結直後の1963年、道路建設に駆り出されていたところを、誤って国境を越えてインド側で捕虜になってしまい、各地の刑務所をたらい回しにされた挙句、1969年にようやく解放された。

その後、マディヤ・プラデーシュ(Madhya Pradesh)州バラガート(Balaghat)県にあるティロディ(Tirodi)という村に連れて来られ、その村でインド人女性シュシラ(Shushila)さんと出会い結婚した。
以来、インドからの出国を禁じられ、市民権を与えられることもなく、さらに生活がかなり厳しかったため、帰国する手段がなかったようだ。

ワンさんの数奇な運命は、たびたびインドのメディアが取り上げていたが、最近になり英BBC放送がテレビで報じたことで、中国のソーシャルメディア上にも拡散、帰国を求めるワンさんの願いがようやく中国政府に届いた。

50年以上の時を経て77歳になったワンさんは今月10日、息子のヴィシュヌ・ワン(Vishnu Wang)さんや孫孫たちも伴って、ようやく祖国中国の親族と再会する機会を得た。
ただしシュシラさんは体調不良のため、自宅にとどまった。

北京の空港には、待ちかねた親族や同級生が出迎え、再会を果たした。

中国外務省は2013年、ワンさんに中国人パスポートを発行した。
また、この度の帰国に際し、ワンさんの家族全員(インド人パスポート)に査証が発行されただけでなく、インド外務省はワンさんがまた戻って来られるよう、再入国ビザを発行している。

インド政府関係者は、今回のような交流は、中国とパキスタンとの間に建設が計画されている経済回廊がPOK(パキスタン領カシミール)を通ることに対するインド政府の懸念や、中国によるインドの原子力供給国グループ入りの阻止、2001年にインド国会議事堂襲撃事件を首謀し、国連によりテロリスト集団として指定され、制裁対象であるムハンマド軍(Jaish-e-Mohammed:JeM)の指導者マスード・アズハル(Masood Azhar)の、中国による擁護などの諸問題を抱える両国にとって意味を持つものだと語っている。

ところで、このニュースは当初、NDTVウェブサイトで読んだので、「いい話」として紹介するつもりだったのだが、BBCのトーンがあまりにもNDTVとは異なっていて単純な話ではなさそうだなと思い直してしまった。
ヒンドゥスタン・タイムスでは、この話の経緯まで過去記事をさかのぼって読めるのでさらに興味深い。

Chinese soldier, who strayed to India, waited 54 yrs for bowl of Shaanxi noodles - Hindustan Times

ともあれ、インドで家族を築き、孫にまで恵まれているワンさんの人生は、強い望郷の念こそあっただろうが、悪いことばかりではなかったと思いたい。
なお、この話題についての記事を作成するにあたり、中印国境紛争のことから、中パ経済回廊問題に至るまで、いろいろと調べることになりとても勉強になった。
抄訳記事の掲載は、今後もなるべく続けていきたい。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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